稗田阿礼

稗田阿礼（ひえだ の あれ）

稗田阿礼は、飛鳥時代から奈良時代にかけて生きたとされる人物です。『古事記』の編纂者の一人として知られていますが、その生涯については不明な点が多く、謎に包まれています。

概要

稗田阿礼について確かなことは、『古事記』の編纂に関わったとされることのみです。同時代の史料である『日本書紀』や『続日本紀』には記述がなく、『古事記』序文にわずかな記述が見られるのみです。序文によれば、天武天皇に舎人として仕え、28歳の時にその記憶力の良さを認められ、『帝紀』『旧辞』の誦習を命じられたとされています。その後、元明天皇の時代に太安万侶が阿礼の誦習した内容を筆録し、『古事記』が編纂されました。

『斎部氏家牒』によれば、宇治土公の庶流であり、天鈿女命（アメノウズメ）の末裔であるとされています。

異説

性別について

通常、「舎人」は男性を指しますが、江戸時代には稗田阿礼を女性とする説が提唱されました。平田篤胤は『古史徴開題記』の中で「阿礼は実に天宇受売命之裔にて、女舎人なると所思たり。」と述べています。柳田國男や西郷信綱らもこの説を支持しました。その根拠として、稗田氏が天鈿女命を始祖とする猿女君と同族であり、猿女君は巫女や女孺として朝廷に仕える一族であったこと、「アレ」という言葉が巫女の呼称であったことなどが挙げられます。

その他の異説

『新撰姓[[氏録]]』に「阿礼首」という氏族が存在することから、稗田阿礼の名前は地名に由来するという説もあります。
『古事記』には、『日本書紀』と比較して女神や巫女的存在の神を重要視する記述が見られることも、女性説を裏付ける根拠として挙げられています。
梅原猛は、『古事記』の大胆な記述や阿礼の年齢などから、稗田阿礼は藤原不比等の別名ではないかという説を唱えています。

実在性

稗田阿礼の実在性については、その出自や事績がほとんど不明であるため、議論が分かれています。

670年の庚午年籍やその後の庚寅年籍に記載された人々のほとんどが「姓付きの氏」を持っているのに対し、稗田阿礼には姓の記載がないことが、非実在性を疑う根拠の一つとされています。
また、太安万侶が阿礼の姓を知らないとは考えにくいこと、日本の重要文献の編纂関係者で、稗田阿礼のような氏名表示をしている例が他にないことなども、疑問視される点として指摘されています。

関係旧跡

賣太神社（奈良県大和郡山市稗田町）：稗田阿禮命（稗田阿礼）を主祭神として祀っています。付近は猿女君稗田一族の居住地であったとされ、阿礼の出身地とされています。
稗田神社（兵庫県揖保郡太子町）：阿礼比売命（稗田阿礼）を祭神として祀っています。
飛騨せせらぎ街道：道中に「稗田阿礼生誕の地」との看板が立てられています。

関連項目

古事記
稗田阿求 - 東方Projectの登場人物。稗田阿礼をモデルとしている。

外部リンク

* 稗田阿礼：作家別作品リスト - 青空文庫

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