稗貫郡

稗貫郡：消滅した郡域の歴史

概要

稗貫郡は、岩手県にあった郡です。現在の花巻市の大部分をその郡域としていました。811年の成立から、明治時代の町村制施行、昭和・平成の大合併を経て、2006年に消滅しました。本稿では、その歴史と変遷について詳細に解説します。


古代～近世

811年（弘仁2年）、稗縫郡（後の稗貫郡）は、和賀[[郡]]、斯波郡とともに「志波三郡」として成立しました。これは「胆沢三郡（胆沢[[郡]]・江刺[[郡]]・磐井[[郡]]）」とともに、律令制下の重要な六郡を形成する出来事でした。翌812年（弘仁3年）には徳丹城が築かれ、政治の中心地としての役割を担うようになりました。志波三郡以北の統帥権も「鎮守府領六郡」として集約され、この地域における政治構造が大きく変容していきました。

10世紀には、斯波郡の領域が北へ拡大し、その結果、岩手[[郡]]が斯波郡から分離独立しました。また、磐井[[郡]]は国府多賀城領に編入され、「奥六[[郡]]」（岩手[[郡]]・志和郡・稗貫郡・和賀[[郡]]・江刺[[郡]]・伊沢郡）が成立しました。この奥六[[郡]]は、後の岩手県の歴史において重要な役割を果たすことになります。

近世においては、稗貫郡は陸奥国に属し、全域が盛岡藩領でした。幕末期の村の数は68にのぼり、それぞれの村が独自の自治を営んでいました。


近代

明治維新後、陸奥国が分割され、稗貫郡は陸中国に所属することになりました。盛岡藩は戊辰戦争後の処分により領地を没収され、信濃松本藩の支配下、花巻県として一時的に管轄されましたが、その後、再び盛岡藩の管轄に戻りました。明治4年（1871年）の廃藩置県により、盛岡県、そして岩手県へとその管轄が移り変わりました。

明治11年（1878年）、郡区町村編制法の施行により、行政区画としての稗貫郡が正式に発足。郡役所は里川口村に設置されました。


町村制施行以降

明治22年（1889年）の町村制施行により、稗貫郡は3町13村に分割されました。その後、合併や町制施行などが繰り返され、郡の行政区域は変遷を続けます。

重要な出来事としては、以下の点が挙げられます。

明治30年（1897年）：郡制施行、里川口町の改称（花巻川口町）。
大正12年（1923年）：郡会廃止、郡役所存続、後に郡役所廃止。
昭和3年（1928年）：好地村の町制施行（石鳥谷町）。
昭和4年（1929年）：花巻川口町と花巻町の合併（花巻町）。
昭和17年（1942年）：「稗貫地方事務所」設置。
昭和29年（1954年）：花巻市発足。
昭和30年（1955年）：大迫町、石鳥谷町の発足。
平成18年（2006年）：花巻市、和賀[[郡]]東和町との合併により、改めて花巻市が発足。稗貫郡消滅。


消滅

平成18年（2006年）1月1日、大迫町と石鳥谷町が、花巻市と和賀[[郡]]東和町と合併し、新たな花巻市が誕生しました。これに伴い、稗貫郡は消滅しました。長きにわたる歴史に幕を閉じ、その地名は歴史の中に刻まれることになりました。


参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 3 岩手県、角川書店、1985年2月7日。
旧高旧領取調帳データベース

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