稲垣示

稲垣示（いながき しめす）

稲垣示は、嘉永2年（1849年）に越中国射水郡棚田村（現在の富山県射水市）に生まれ、明治35年（1902年）に52歳で亡くなった政治家です。幼名は恒太郎、号は虎岳と称しました。

生い立ちと自由民権運動への参加

稲垣は、野上文山らに師事し、明治維新後は新川県小学校教員講習所や石川県農業講習所で学びました。その後、板垣退助の自由民権運動に共鳴し、運動に身を投じます。明治13年（1880年）には愛国社第4回大会に参加し、高岡にて政治結社「北立社」を結成しました。翌年には自由党の結成に参加し、明治15年（1882年）には北立社を自由党の支部である「北立自由党」へと改組し、瑞龍寺で結党大会を開催しました。

県会議員から投獄へ

同年6月には石川県会議員に選出されますが、同年10月、県令千坂高雅の私生活におけるスキャンダルを県議会で取り上げたことが問題となり、官吏侮辱罪に問われてしまいました。その結果、重禁錮5か月、罰金30円の判決を受け、議員を罷免されることとなります。しかし、この出来事をきっかけに杉田定一らと共に北陸地方の自由民権派を結集させるべく活動を始め、明治16年（1883年）には瑞龍寺で「北陸七州有志懇談会」を主催し、成功を収めました。

しかし、この会合をきっかけとして高田事件が発生し、稲垣自身も明治18年（1885年）に大井憲太郎の朝鮮政府転覆計画に関与したとして逮捕され、外患罪で軽禁錮5年の判決を受けました。3年間入獄（大阪事件）することとなり、その間に詠んだ短歌300首を『狭衣集』として後に刊行しました。

政治活動の再開と衆議院議員としての活躍

大日本帝国憲法発布に伴う大赦で釈放された後、大同団結運動に参加しますが、運動の主流から外れたため、大同倶楽部、国民自由党、独立倶楽部、東洋自由党、大日本協会と様々な政治団体を渡り歩きました。明治31年（1898年）には再興された自由党に復帰します。

その間、第2回衆議院議員総選挙では富山県3区から吏党系候補として当選し、その後も2回（第3回・第6回）当選を果たしました。衆議院議員としては、田中正造と協力して足尾銅山鉱毒事件を追及したり、普通選挙運動を展開したりするなど、積極的に活動しました。自由党復帰後は、憲政党、立憲政友会の要職を務めました。

急逝

再選を目指した第7回衆議院議員総選挙の投票日前日、富山市で行われた他の候補者の応援演説中に病に倒れ、急逝しました。その波乱に満ちた生涯は、後世に語り継がれています。

稲垣示は、自由民権運動の活動家として、また衆議院議員として、激動の明治時代を駆け抜けた人物でした。その政治活動は、地方政治から国政まで多岐にわたり、日本の民主主義の発展に大きく貢献しました。

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