稲葉正巳

稲葉正巳の生涯と業績

稲葉正巳（いなば まさみ）は、文化12年（1815年）10月15日に生まれ、安房館山藩の第4代藩主として知られた江戸時代の大名です。彼は3代藩主の長男であり、その家督を相続することとなりました。正巳は大名家に生まれ、歴史的な動乱の時代を生き抜いた人物で、多くの変革に寄与しました。

彼の人生は、父である稲葉正盛の死去という早い家督相続から始まります。文政3年（1820年）2月7日、正盛が亡くなると、正巳はわずか5歳で家督を引き継ぎました。青年期には様々な役職を経験し、天保3年（1832年）には将軍徳川家斉に謁見を果たします。

正巳の支配下にある安房館山藩は、幕末の動乱期にあたるため、彼は時代に即した多様な改革を推進しました。文久2年（1862年）に若年寄に任命されたことで、彼は幕府の政策決定に影響を与える立場となります。

元治元年（1864年）には、外国御用取扱勝手掛及び海陸備向取扱の役を兼務し、特に神戸海軍操練所の設立に貢献しました。この動きは、明治時代の日本海軍の基盤を築くものとして、今なお評価されています。

しかし、同年に若年寄を辞任し、隠居することを選択し、その家督を養子である正善に譲りました。正巳が隠居した後も、幕府の動向から目を離さず、慶応元年（1865年）に再び若年寄の職に戻ります。彼の復帰は、幕府海軍の整備に尽力する主な要因ともなりました。

徳川慶喜の信任を受け、慶応2年（1866年）には陸軍奉行や海軍総裁といった重要な役職を歴任し、さらには老中格にも昇進します。彼の能力は高く評価され、幕府の要職において数々の重要な決定に携わることとなりました。

しかし、明治元年（1868年）に新政府が成立すると、正巳は幕府のすべての役職を辞任し、新たな時代に恭順する道を選びました。この選択は、彼が歴史の変化に対して柔軟に適応したことを示しています。彼はその後も地域社会に貢献しましたが、明治12年（1879年）9月16日に65歳でこの世を去りました。

家族と系譜

正巳は父に稲葉正盛、母に本多忠誠の娘を持ち、正室には諏訪忠恕の娘である諏訪牧子を迎えました。また、彼には養子の稲葉正善がかけられ、正善は大岡忠恕の次男でした。

参考文献

• - 土居良三、『軍艦奉行木村摂津守 近代海軍誕生の陰の立役者』（中公新書、1994年）
• - 勝海舟、『海軍歴史』（海軍省、1889年）
• - 勝海舟全集（講談社、勁草書房）

稲葉正巳は、幕末の激動期における日本の政治と軍事に影響を与え、生涯を通じて多くの改革を行ったことが評価される大名でした。

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