立原久綱

立原久綱

立原久綱（たちはら ひさつな）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将です。尼子氏の家臣であり、尼子三傑の一人として数えられています。山中幸盛の叔父であり、主君である尼子義久の参謀として、毛利元就との戦いで活躍しました。その生涯は、尼子氏の興亡とともに、激動の時代を生き抜いた武将の姿を伝えています。

生涯

立原氏は、尼子氏の直臣として仕えた家柄であり、久綱もまた、奉行衆として尼子晴久の発給文書に連署しています。立原幸綱の子として生まれた久綱は、若い頃から武将としての才能を発揮しました。

白鹿城の戦い

永禄6年（1563年）、毛利氏が白鹿城を攻めた際、尼子義久は弟の倫久を大将として後詰を送ります。この時、久綱は積極的な救援策を主張しましたが、他の家老たちの反対により受け入れられませんでした。後詰軍は馬潟原に陣を敷き、大橋川を渡って和久羅付近まで進出しましたが、毛利軍に撃退されてしまいます。撤退の際、久綱は山中幸盛と共に殿（しんがり）を務め、追撃する毛利軍に大きな損害を与え、倫久を富田まで逃がすことに成功しました。

月山富田城の戦い

永禄8年（1565年）の月山富田城の攻防戦では、尼子倫久の指揮下で、山中鹿介、秋上宗信らと共に塩谷口を守備しました。翌永禄9年（1566年）に月山富田城が落城した際には、降伏の使者として毛利氏との交渉にあたりました。その交渉術は高く評価され、毛利氏から2,000貫で仕官を誘われましたが、これを断り、京へ隠棲しました。

尼子氏再興への尽力

その後、久綱は山中幸盛や神西元通らと共に、尼子一族の尼子勝久を擁して尼子氏の再興に尽力します。永禄12年（1569年）の美保関の合戦では、隠岐為清の軍勢に苦戦を強いられた尼子再興軍を、山中幸盛を援護して立て直しました。織田信長に援助を求めるため上洛した際には、その人物を信長に高く評価され、「貞宗の太刀」を与えられました。尼子氏が織田信長と同盟を結ぶことができたのは、久綱の功績が大きいとされています。

上月城の戦いとその後

尼子再興軍は、後に豊臣秀吉の中国征伐軍に組み込まれます。天正5年（1577年）には、毛利氏から上月城を奪還し、久綱らは同城を拠点としました。しかし、天正6年（1578年）、織田信長配下の秀吉の方針に不満を持った別所長治が離反したため、秀吉は三木合戦に兵力を割かざるを得なくなります。この隙を突いて毛利軍が上月城に進軍し、兵糧攻めによって上月城は落城しました。尼子勝久や山中幸盛は討ち死にし、尼子氏の再興は絶たれてしまいます。

久綱は毛利軍の捕虜となりましたが、「病気回復後に処分する」という配慮から監視下に置かれたものの、脱走に成功します。その後、上洛して蜂須賀氏のもとにいた娘婿（または義父）の福屋隆兼を頼り、阿波国渭津に居住しました。慶長18年（1613年）4月26日、83歳でその生涯を終えました。

後裔

島根県知事を務めた恒松制治は、立原久綱の後裔と称しています。

立原久綱は、その生涯を通じて、尼子氏への忠誠を貫き、激動の戦国時代を生き抜いた武将として、後世に語り継がれています。

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