童子問

童子問（どうじもん）

『童子問』は、江戸時代前期の儒学者である伊藤仁斎によって著された、漢文体の問答形式による儒教の概説書です。全3巻から構成されています。

成立と刊行

伊藤仁斎は元禄4年（1691年）頃より本書の執筆を開始し、2年後には序文を記しています。その後も、宝永2年（1705年）に仁斎が没するまで、改訂と加筆が続けられました。仁斎の死後、息子の伊藤東涯や門人の林景范によって校訂と清書が行われ、彼らの尽力により、宝永4年（1707年）に刊行されました。

仁斎が創設し、東涯が継承した古義堂では、『童子問』は基本書として非常に重視されました。東涯が行った注釈を記した『童子問標釈』も、東涯の没後の寛保2年（1742年）に刊行されています。

内容

『童子問』は、宋代の欧陽脩の『易童子問』などを範とし、童子と師匠との問答形式で、仁斎の考える儒教の原理、方法、実践について論じています。特に、朱子学や陽明学などの宋学を、仏教や道教の影響を受けた考え方として排除し、孔子の教えは『論語』に従い、不明な点があれば『孟子』を用いるように唱えています。

仁斎は、儒教の根本精神は、人間の自然な感情や道徳心に根ざしていると考えました。そのため、宋学のような複雑な理論や解釈を排し、孔子の言葉に直接立ち返ることを重視しました。この思想は、当時の儒学界に大きな影響を与え、古学と呼ばれる新たな学派の形成につながりました。

刊行版

『童子問』、各・清水茂校注
岩波書店・日本古典文学大系 近世思想家文集 1966年（原文、書き下し文）
岩波文庫（書き下し文）、1970年。度々再版

参考文献

清水茂「童子問」『国史大辞典 10』（吉川弘文館 1989年） ISBN 978-4-642-00510-4
三宅正彦「童子問」『日本史大事典 5』（吉川弘文館 1993年） ISBN 978-4-642-00510-4
三宅正彦「童子問」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年） ISBN 978-4-09-523003-0

関連項目

古学
日本の儒教

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