竹葉山真邦

竹葉山 真邦（ちくばやま まさくに）は、1957年8月21日生まれの元大相撲力士です。福岡県浮羽郡浮羽町（現在のうきは市）出身（出生地は福岡県八幡市、現在の北九州市）で、宮城野部屋に所属しました。本名を田崎 誠といい、現役時代の体格は身長176cm、体重121kgでした。得意技は突きや押しです。最高位は東前頭13枚目（1986年9月場所）でした。

現役引退後、1989年から2004年、そして2010年から2022年の二度にわたり宮城野部屋の師匠として多くの力士を育成しました。特に、後の大横綱白鵬の育成に尽力したことで知られています。

来歴

現役時代

幼少期から相撲に親しみ、北九州市立黒崎中学校時代には相撲部がなかったため野球部に所属していました。中学2年生の時に父親の知人から角界入りを勧められ、中学校を卒業すると同時に宮城野部屋に入門。1973年3月場所に初土俵を踏みました。同期には、後に関脇となる高望山などがいます。

当初の四股名は本名の「田崎」でしたが、1974年3月場所前に「筑葉山」と改名しました。これは故郷である福岡県の旧称の一つ「筑後」と、師匠の現役名「吉葉山」にちなんだものです。

体は大きくなかったものの、立ち合いから力強く当たって突き押しで攻める相撲を得意とし、番付を確実に上げていきました。1978年11月場所では、21歳で新十両昇進を果たします。

しかし、組み合う体勢になると力を発揮できないという弱点が課題となり、この場所を6勝9敗と負け越してわずか1場所で幕下へ陥落しました。その後、1983年1月場所で再十両昇進を果たすまで、4年以上にわたり幕下の地位に低迷しました。

この低迷期には、四股名を「筑葉山」から「竹葉山」に変更。これは当時の師匠であった9代宮城野親方（元小結・廣川）の助言によるものです。また、稽古熱心で、連日同じ立浪・伊勢ヶ濱連合の友綱部屋へ足繁く通い、幕内力士だった魁輝関との厳しい稽古を通じて実力を高めました。

1984年1月場所で3度目の十両昇進を果たしてからは十両の地位に定着し、1986年5月場所では自身初の十両優勝を遂げました。そして同年9月場所、ついに新入幕を果たします。初土俵から所要81場所での新入幕は歴代10位タイ、新十両昇進から所要47場所での新入幕は歴代1位という、非常に遅咲きの記録となりました。

しかし、この9月場所では6勝9敗と負け越して再び十両へ陥落。翌11月場所では10勝5敗と好成績を挙げ、優勝同点という活躍を見せて翌1987年1月場所で再度幕内へ昇進しました。しかし、この場所も5勝10敗と大きく負け越し、幕内在位は合計で2場所のみに終わりました。

以降は調子を落とし、1988年5月場所では幕下へ陥落。二度と関取（十両以上）の地位へ戻ることはできませんでした。

現役引退・年寄襲名後

1989年1月場所の途中で現役引退を表明し、年寄「中川」を襲名して宮城野部屋付き親方となりました。この引退は、元号が昭和から平成に変わって初めてのことでした。

ところが、同年6月に師匠である9代宮城野親方が急死したことに伴い、急遽10代宮城野を襲名して宮城野部屋を継承。師匠として、横綱白鵬や前頭光法といった関取を育て上げました。

2004年7月、北の湖部屋に所属していた十両力士の金親が9代宮城野親方の娘と結婚。金親が引退して11代宮城野を襲名し、宮城野部屋を継承することとなりました。これにより、元竹葉山が取得していた宮城野の年寄名跡は一時的なものであったことが明らかとなりました。10代宮城野だった彼は同年9月場所前までに年寄「熊ヶ谷」の名跡を取得し、15代熊ヶ谷として部屋付き親方となりました。弟子の光法が引退した際には、部屋付き親方でありながら断髪式で止め鋏を入れています。

横綱白鵬の育成には並々ならぬ心血を注いだと伝えられています。白鵬がまだ若い衆だった頃、部屋の経営に余裕がなかったにもかかわらず、白鵬の口に合うとされる鹿肉や羊肉をわざわざ予算を捻出して調達したという逸話が残っています。また、白鵬の大関昇進直後にはある酒造メーカーから祝儀代わりのCM出演依頼がありましたが、白鵬が昇進伝達式で述べた「大関の地位を汚さぬよう、全身全霊をかけて努力します」という言葉を受けて、「『全身全霊』と誓ったばかりなのに、すぐ酒のCMに出るわけにはいかないだろう」と、この依頼を断ったといいます。

2007年5月場所後、白鵬が横綱に昇進した際の横綱審議委員会で、当時の日本相撲協会理事長だった北の湖親方は委員からの質問に対し、「今まで熊ヶ谷がやってきたのだから、今後も熊ヶ谷が指導すべき」と答え、15代熊ヶ谷が白鵬の実質的な師匠であることを公に認めました。しかし、白鵬の大関・横綱昇進伝達式の両方に同席することは叶わず、影から見守る立場に留まりました。

通常、横綱・大関の師匠はNHKの大相撲中継で解説を務めることが多いですが、11代宮城野親方には幕内経験がなかったこともあり、15代熊ヶ谷が向正面解説を務めていました（その際は「白鵬の育ての親の熊ヶ谷親方」と紹介されることが多かったようです）。

2007年に『週刊現代』が「11代宮城野親方が知人女性に、白鵬が横綱朝青龍らに金を払って勝たせてもらったと話した」とする記事を掲載した問題が起こります。日本相撲協会は名誉棄損で訴訟を起こし勝訴しましたが、協会は11代宮城野親方の言動が協会の品位を傷つけたとして、2010年12月に15代熊ヶ谷との年寄名跡交換による部屋の師匠交代を勧告しました。これを受け入れた11代宮城野親方は16代熊ヶ谷となり、15代熊ヶ谷が年寄名跡を交換する形で12代宮城野として再び宮城野部屋の師匠に復帰しました。

協会では審判委員も務めました。2012年2月から2013年2月まで勝負審判として土俵下で協議に参加し、2014年9月場所では代役で再度審判を務めました。

10代宮城野を襲名した際は9代宮城野親方の年寄名「宮城野 泰孝」をそのまま継承しましたが、12代宮城野に再襲名して以降は15代熊ヶ谷時代のものと同じ「宮城野 誠志」と名乗りました。

停年後

日本相撲協会での定年退職が翌月に迫った2022年7月28日、自身と宮城野部屋付きだった元横綱白鵬（当時の年寄名：21代間垣）との間で年寄名跡を交換し、白鵬が13代宮城野として部屋を継承することが協会に承認されました。これにより、22代間垣を襲名した自身は宮城野部屋の師匠の座を譲り、部屋付き親方となりました。定年退職後も再雇用制度を利用して引き続き部屋付き年寄として活動を続けましたが、任期を4年以上残して2023年6月1日付で日本相撲協会を退職しました。年寄名跡「間垣」は、かつての弟子である石浦に継承させています。

主な成績・記録

通算成績: 442勝402敗21休（勝率.524）
幕内成績: 11勝19敗（勝率.367）
現役在位: 96場所
幕内在位: 2場所
各段優勝: 十両優勝1回（1986年5月場所）
最高位: 東前頭13枚目

改名歴

田崎 誠（たざき まこと）1973年5月場所 - 1974年1月場所
筑葉山 誠（ちくばやま -）1974年3月場所 - 1979年9月場所
竹葉山 誠（ちくばやま -）1979年11月場所 - 1981年1月場所
竹葉山 真邦（- まさくに）1981年3月場所 - 1989年1月場所

年寄変遷

中川 清勝（なかがわ きよまさ）1989年1月20日 - 1989年6月20日
宮城野 泰孝（みやぎの やすたか）1989年6月20日 - 2004年8月26日
熊ヶ谷 誠志（くまがたに せいじ）2004年8月26日 - 2010年12月27日
宮城野 誠志（みやぎの -）2010年12月27日 - 2022年7月28日
間垣 誠志（まがき -）2022年7月28日 - 2023年6月1日

著書

『白鵬 「山」を越える男』（主婦と生活社、2010年） ※15代熊ヶ谷誠志名義

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