笠原幸雄

笠原幸雄は、1889年（明治22年）に仙台で生まれ、1988年（昭和63年）に98歳で亡くなった日本の陸軍軍人です。陸軍中将まで昇進し、特にロシア通の参謀としてその名を知られていました。

生い立ちと初期の軍歴

笠原は、陸軍主計の父、笠原幸之助の長男として誕生しました。東京府立一中、陸軍中央幼年学校を経て、1913年（大正2年）に陸軍士官学校を卒業（22期）。さらに1918年（大正7年）には陸軍大学校を卒業（30期）し、着実に軍人としてのキャリアを積み重ねました。

要職を歴任した参謀時代

1937年（昭和12年）には参謀本部に入り、初代ロシア課長に就任。その後、関東軍参謀副長、参謀本部総務部長などを歴任し、陸軍の中枢で活躍しました。1939年（昭和14年）には北支那方面軍参謀長として多田駿中将を補佐し、日中戦争の作戦指導にも携わりました。

1941年（昭和16年）には関東軍第3軍第12師団長に就任し、軍人としての指揮能力を発揮しました。翌1942年（昭和17年）には、関東軍総参謀長として梅津美治郎大将、続いて山田乙三大将を補佐し、さらに補給監も兼務するなど、その多才ぶりを示しました。

終戦とその後

1945年（昭和20年）4月、笠原は自ら野戦指揮官を希望し、支那派遣軍第6方面軍第11軍司令官に着任しました。第11軍は、湘桂作戦のために1944年（昭和19年）に新設された10個師団からなる大規模な部隊であり、笠原はその指揮を執りました。笠原は、「焼くな・殺すな・盗むな」という「三戒」を徹底し、部隊から戦犯を一人も出さずに終戦を迎えることができました。終戦後、部隊は湖南省から九江に移動し、国府軍の璧岳大将と将来の日中友好を誓い合いました。1946年（昭和21年）6月まで、部隊は荒地の開墾を行い、自給自足の生活を送りながら帰国の日を待ちました。

1947年（昭和22年）には公職追放の仮指定を受けましたが、戦後は日本郷友連盟の理事長に就任し、退役軍人の福祉に尽力しました。また、戸山ヶ原の陸軍近衛騎兵師団跡地には、笠原の功績を称える碑が残されています。

栄典

笠原は、その功績により、以下の位階と勲章を授与されています。

位階
1911年（明治44年）3月10日 - 正八位
1914年（大正3年）2月10日 - 従七位
1919年（大正8年）3月20日 - 正七位
1924年（大正13年）5月15日 - 従六位
1937年（昭和12年）9月1日 - 正五位
勲章等
1918年（大正7年）11月29日 - 恩賜の軍刀
* 1940年（昭和15年）8月15日 - 紀元二千六百年祝典記念章

笠原幸雄は、激動の時代を生き抜いた軍人であり、その生涯は、日本の近現代史を語る上で重要な意味を持っています。

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