笠縫邑

笠縫邑（かさぬいむら）とは

笠縫邑は、崇神天皇の時代に、宮中から天照大神を遷し、豊鍬入姫命に祀らせた場所として知られています。同時に、宮中から出された倭大国魂神は渟名城入媛命に託され、後に大和神社に祀られたと伝えられています。

笠縫邑の概要

笠縫邑は、大嘗祭や豊明節会の起源に関係する土地であるという説があります。垂仁天皇紀には、倭姫命が天照大神を磯城の厳橿の本に祀ったとあり、この厳橿は神霊が宿る神木とされています。崇神天皇の時代には、磯堅城に神籬が立てられたとされ、古語拾遺には「磯城の神籬」と記されています。これらの記述から、「磯城の厳橿の本」と「磯堅城の神籬」は同じ場所を指すと考えられています。

笠縫邑の比定地については、複数の説が存在します。

檜原神社（桜井市三輪）
多神社（磯城郡田原本町多）
笠縫神社（磯城郡田原本町秦荘、秦楽寺境内南東隅）
笠山荒神社（桜井市笠）
多神社摂社の姫皇子神社
志貴御県坐神社（桜井市金屋）
小夫天神社（桜井市小夫）
穴師坐兵主神社（桜井市穴師）
飛鳥坐神社（高市郡明日香村飛鳥）
長谷山口坐神社（桜井市初瀬手力雄）

これらのうち、檜原神社、笠山荒神社、小夫天神社、穴師坐兵主神社などは山中に位置しています。

また、笠縫神社に関係する「秦楽（じんらく）」という地名が、築山古墳（大和高田市築山字城山）の前方部眼下に広がる平地にも存在します。この「神楽（じんらく）」は、古くは「秦楽」と書かれていたとの説もあり、何らかの関連性を示唆しているかもしれません。

多神社からは、摂社の屋就神命神社（やつぎかみのみことじんじゃ）の方角を見ると、神楽、築山古墳の方向になります。しかし、実際には「矢継ぎの森」に隠れて見えません。この森は、地元住民によって大切に守られてきました。

さらに、多神社から姫皇子神社の方向を見ると、かつては箸墓が見えていた可能性があります。姫皇子神社は、元々多神社の奥（北）に位置していましたが、後に前（南）に移転された可能性も指摘されています。

もし多神社を笠縫邑の位置とするならば、これらの古墳群は鏡に映したように南北や東西が逆転しますが、大嘗祭の悠紀殿（内削ぎの千木）、主基殿（外削ぎの千木）の起源と関係があるかもしれません。

大阪の笠縫島

深江稲荷神社（大阪市東成区深江南）には、付近の深江は笠縫氏の居住地であり、大和の笠縫邑から移住してきたという伝承があります。万葉歌人の高市黒人が詠んだ歌にも「笠縫の島」として登場しており、古代には入江に浮かぶ島でした。笠の材料を確保するために、笠縫氏が島に住んだと考えられます。このことから、大和の笠縫邑も、低湿地や島状の土地であった可能性が推測されています。

現在でも、大嘗祭に使用する笠は、この深江から皇室に献上されています。また、深江は皇祖の御神鏡に関わる鋳物師とも関係が深い土地とされており、鏡作神社（磯城郡田原本町八尾周辺）との関連性も示唆されています。

関連項目

元伊勢
笠縫駅

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