第十二航空隊

第十二航空隊は、日本海軍が日中戦争中に編成した航空部隊の一つです。爆撃機、攻撃機、戦闘機を擁する特設の戦爆連合部隊として、華中方面での作戦に投入されました。この部隊は、第一二海軍航空隊とは異なり、その呼称も「第十二海軍航空隊」や「第一二航空隊」とするのは誤りです。

沿革

1937年7月7日の盧溝橋事件をきっかけに日中戦争が勃発すると、海軍は直ちに6個航空隊の大陸派遣を決定しました。戦略爆撃を担う第一連合航空隊と、制空や偵察を担う第二連合航空隊（以下、二連空）が編成され、第十二航空隊（以下、十二空）は二連空の攻撃・戦闘部隊として佐伯海軍航空隊から選抜された30機で編成されました。

十二空は、当初は制空任務を担っていましたが、敵勢力が内陸部に移動した1938年2月以降は、陸上攻撃機を主力とする遠距離爆撃機隊へと変貌しました。戦史叢書などでは、しばしば第十三航空隊（以下、十三空）と合わせて「二連空」として扱われることが多く、十二空単独の行動と十三空との共同作戦の区別が難しい場合があります。

主な活動

1937年

7月11日：佐伯飛行場にて臨時編成され、二連空に編入（戦闘機12機、艦上爆撃機12機、艦上攻撃機12機）。
7月28日：二連空は第二艦隊附属に編入。
8月7日：大連の周水子飛行場に進出。
9月7日：上海公大飛行場の制圧を完了し、同飛行場に進出。
9月19日：蘇州、杭州、嘉興を十三空と共同で偵察。
9月16日～27日：南京を十三空と共同で連日空襲。
9月19日：南京空襲時に敵戦闘機隊と空中戦を行い、十三空と共同で14機を撃墜（自軍の喪失なし）。
9月22日：江陰方面で中国艦船を十三空と共同で爆撃。寧海、平海、逸仙を撃破。
10月1日：上海上陸作戦を十三空と共同で支援。
10月頃：蘇州江渡河作戦を十三空と共同で支援。
11月頃：杭州湾上陸作戦を十三空と共同で支援。
12月12日：「パネー号事件」発生。十三空と共同でアメリカ砲艦パナイを誤爆。

1938年

1月10日：戦闘機隊は蕪湖に進出し、前線での戦闘に従事。
4月28日：漢口を十三空と共同で爆撃。
6月26日：南昌を強襲し、機銃掃射で19機を地上撃破。
7月14日：漢口、南昌を爆撃。
以後、漢口攻略作戦に従事し、11月15日の陥落まで全力で出撃。

1939年

9月14日：陸軍贛湘作戦に協力。

1940年

1月10日：桂林を爆撃。
4月：宜昌作戦に参加。占領後は宜昌に進出し、奥地爆撃や防空に従事。
7月21日：零式艦上戦闘機（零戦）の供給開始。横須賀海軍航空隊からの空輸組と漢口基地からの選抜組で構成。
8月19日：零戦が重慶爆撃隊の護衛に初投入。
9月13日：重慶上空で零戦の初空中戦。中国空軍戦闘機27機を撃墜（中国側資料では13機）。
10月4日：零戦が成都を強襲。一部の搭乗員は強行着陸を敢行し、地上機を焼き討ち、撃墜6機、地上炎上19機を報告。

1941年

3月14日：成都を強襲。零戦隊は中国空軍機27機を撃墜（うち不確実3）、地上で5機を破壊（中国側資料では10機被撃墜、7機損傷）。
5月16日：零戦と偵察機からなる南方隊と北方隊が南鄭、成県、天水の各飛行場を襲撃。
5月21日：重慶向け爆撃機隊の護衛に参加。
9月15日：内地帰還・解隊。

1941年、対米英戦に備えて、十二空は内地に帰還し、部隊は解隊。隊員は新規基地航空部隊の拡張・新編要員に振り向けられました。これをもって海軍航空隊は大陸から完全に手を引き、大陸戦線の航空戦は陸軍飛行隊に引き継がれました。

主力機種

九〇式艦上戦闘機
九六式艦上戦闘機
零式艦上戦闘機
九四式艦上[[爆撃機]]
九二式艦上[[攻撃機]]
九七式一号艦攻
九七式三号艦攻
九九式艦上[[爆撃機]]

隊司令

今村脩大佐：1937年7月11日 - 1937年11月15日
三木森彦中佐/大佐： 1937年11月15日 - 1938年12月15日
吉良俊一大佐：1938年12月15日 - 1939年10月25日
古瀬貴季中佐/大佐：1939年10月25日 - 1940年6月21日
長谷川喜一大佐：1940年6月21日 - 1941年3月25日
内田市太郎大佐：1941年3月25日 - 1941年9月15日

参考文献

『日本海軍編制事典』芙蓉書房出版、2003年。
『航空隊戦史』新人物往来社、2001年。
『日本海軍航空史2』時事通信社、1969年。
『日本海軍航空史4』時事通信社、1969年。
『戦史叢書　海軍航空概史』朝雲新聞社、1976年。
『戦史叢書　中国方面海軍作戦1』朝雲新聞社、1974年。
『戦史叢書　中国方面海軍作戦2』朝雲新聞社、1975年。
『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』アテネ書房、1996年。
* 秦郁彦・伊沢保穂著『日本海軍戦闘機隊戦歴と航空隊史話』大日本絵画、2010年。

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