第1軍団イタリカ

第1軍団イタリカ：ローマ帝国の辺境を守り抜いた歴戦の軍団

第1軍団イタリカ（Legio I Italica）は、ローマ帝国を支えた数多の軍団の中でも、特に長い歴史を持つことで知られています。その起源は、西暦66年9月22日、ネロ帝の時代に遡ります。第四次パルティア戦争終結後、帝国の восточный 国境を強化するために編成されました。

軍団の紋章はイノシシ。これは、軍団の兵士たちの勇敢さ、そして猪突猛進するような戦闘スタイルを表していたのかもしれません。当初は「アレクサンドロス大王の軍団」という勇ましい別名も持っていました。

激動の時代を生き抜く

編成後、第1軍団イタリカはアルメニアへの遠征を計画しますが、ユダヤ戦争の勃発により中止。その後、68年にはガリアの反乱鎮圧へと向かいます。ネロ帝の死後、四皇帝の年と呼ばれる内戦時代には、ヴィテッリウスを支持し、ベドリアクムの戦いに参加。しかし、ウェスパシアヌス率いる軍に敗北します。

ウェスパシアヌス帝の時代になると、第1軍団イタリカはモエシア（現在のブルガリア北部）に駐屯。現在のスヴィシュトフ近郊に拠点を置き、ドナウ川の国境警備という重要な任務を担うことになります。以降、この地は軍団の home となり、数世紀にわたって帝国の防衛に貢献します。

ダキア戦争と土木工事

トラヤヌス帝の時代には、ダキア戦争に参加。ドナウ川に架橋するなど、土木作業においてもその能力を発揮しました。第1軍団イタリカは、戦闘だけでなく、インフラ整備にも貢献する多才な集団だったようです。140年頃には、アントニヌスの長城の建設にも百人隊長が派遣されています。

マルクス・アウレリウス帝の時代には、マルコマンニ戦争に参加。ドナウ川を越えて侵入してくるゲルマン民族を迎え撃ちました。アウレリウス帝は、長きにわたる戦いの後、第1軍団イタリカと第4軍団フラウィア・フェリクスを駐屯させ、新たな属州を設置しようとしましたが、アウィディウス・カッシウスの反乱によって実現しませんでした。

内戦と帝国の防衛

193年、モエシアを統治していたセプティミウス・セウェルスが帝位を表明すると、第1軍団イタリカは彼を支持。しかし、本国イタリアへは進軍せず、セウェルスの政敵であるペスケンニウス・ニゲルの軍団と交戦します。第10軍団クラウディアとともにビザンティウムを包囲、その後イッソスの戦いにも参加しました。

3世紀に入ると、カラカラ帝の時代に、駐屯地から始まる新たなリメス（国境防衛線）の設営に携わります。アレクサンデル・セウェルス帝の時代には、分隊がサロナ（現在のクロアチア、スプリト近郊）に派遣され、ダルマティア海域の防衛に従事しました。

その後

第1軍団イタリカの記録は、5世紀初頭まで確認できます。この頃には、ドナウ川の国境沿いに駐在していたことが分かっています。長きにわたり、帝国の восточный 国境を守り抜き、数々の戦役や土木工事を通じてローマ帝国の歴史に名を刻んだ第1軍団イタリカ。その足跡は、今もなお、ヨーロッパ各地に残されています。

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