第10期棋聖戦 (囲碁)

第10期棋聖戦

1985年に開幕した第10期棋聖戦は、趙治勲棋聖に小林光一九段が挑戦し、1986年1月から七番勝負が行われました。結果は小林光一が4勝2敗で趙治勲を破り、棋聖位を奪取しました。

対局に至るまで

小林光一は前年の名人戦でも趙治勲を破って名人を獲得し、さらに天元戦も制して十段と合わせて三冠となっており、まさに絶頂期。棋聖戦七番勝負は、当時の囲碁界における頂上決戦として注目されました。

一方、趙治勲は武宮正樹との七番勝負後にスランプを告白していましたが、防衛戦に向けて温泉で棋譜並べを行うなど、万全の準備で臨む姿勢を見せていました。しかし、七番勝負直前に交通事故で大怪我を負い、入院を余儀なくされます。

当初は対局自体が危ぶまれましたが、趙治勲本人の強い希望により、異例の車椅子での対局が実現することになりました。

対局方式

参加棋士: 日本棋院・関西棋院の棋士
決定方法:
各段優勝戦: 各段位ごとにトーナメントを実施
最高棋士決定戦: 各段優勝者とタイトル保持者によるパラマス式トーナメント。決勝は三番勝負。
コミ: 5目半
持ち時間:
四段戦まで: 5時間
五段戦以上: 6時間
挑戦手合七番勝負: 各9時間
優勝賞金: 2600万円

各段優勝戦・最高棋士決定戦の結果

各段戦では、山田和貴雄（初段）、森田道博（二段）、藤沢一就（三段）、安田泰敏（四段）、橋本雄二郎（五段）、彦坂直人（六段）、宮沢吾朗（七段）、上村陽生（八段）、羽根泰正（九段）がそれぞれ優勝しました。

最高棋士決定戦では、小林光一名人と加藤正夫王座が決勝三番勝負を争い、小林が2-1で勝利して挑戦権を獲得しました。

挑戦手合七番勝負

苦難の第一局

趙治勲は、交通事故による怪我のため、七番勝負第一局は車椅子での対局となりました。対局は1月16-17日に富山県高岡市で行われ、小林が先勝しました。

その後の展開

続く第2局も小林が制し、連勝。第3局では趙が1勝を返しましたが、第4局で小林が再び勝利し、タイに戻しました。

第5局、第6局は小林が連勝し、4勝2敗で棋聖位を奪取しました。この結果、小林はNHK杯と合わせて五冠となりました。

対局譜のハイライト

第6局: 小林が先番で、左上隅の大ナダレ定石から白が厚みを築くも、黒が巧妙に制限し、優勢に進めて勝利。
第3局: 趙が先番で、下辺で2目を捨て石にして厚みを築き、251手までで1目半勝ち。
* 第5局: 白番の小林が左下隅黒への攻めを狙い、黒は長考の末に左辺白模様への打ち込みを選択。乱戦の末、小林が勝利。

その後

早碁選手権戦決勝三番勝負では、趙が小林に2連勝して優勝。小林は十段戦五番勝負で武宮正樹の挑戦を受けました。趙治勲はこの奮闘により日本囲碁ジャーナリストクラブ賞を受賞し、小林光一はNHKのトーク番組に出演しました。

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