第9期棋聖戦 (囲碁)

第9期棋聖戦：趙治勲 対 武宮正樹、実力伯仲の激戦

第9期棋聖戦は1984年に開幕し、趙治勲棋聖に武宮正樹九段が挑戦する七番勝負が1985年1月から繰り広げられました。趙治勲は前期まで棋聖位を2連覇しており、今回は3連覇がかかった戦いとなりました。

対局方式と参加棋士

日本棋院・関西棋院に所属する棋士が参加。

各段優勝戦: 初段から九段までの各段位でトーナメント戦を行い、それぞれの優勝者を決定します。
全段争覇戦: 各段優勝戦の勝者と、七段戦・八段戦の上位入賞者、九段戦のベスト4進出者が、パラマス式トーナメントで争います。
* 最高棋士決定戦: 本因坊、十段、天元、王座、碁聖のタイトル保持者と、全段争覇戦の上位者、棋聖審議会推薦棋士の計11名がトーナメントを行い、前期棋聖への挑戦者を決定します。

コミは5目半。
持ち時間は、四段戦までが5時間、五段戦以上は6時間、挑戦手合七番勝負は各9時間と、長丁場の戦いです。
優勝賞金は2300万円でした。

各段優勝戦・全段争覇戦の結果

各段戦では、平野則一が初段戦で優勝。二段戦は鄭銘琦、三段戦は村松竜一、四段戦は石倉昇、五段戦は趙治勲の兄である趙祥衍がそれぞれ優勝しました。六段戦は新垣武が前期に続いて連覇。七段戦は小林覚、八段戦は川本昇、九段戦は小林光一が優勝しました。

全段争覇戦では、小林覚が優勝し、武宮正樹、苑田勇一とともに最高棋士決定戦への出場権を獲得しました。

最高棋士決定戦

林海峰本因坊、小林光一十段、片岡聡天元、加藤正夫王座、大竹英雄碁聖、小林覚、武宮正樹、白石裕、苑田勇一、坂田栄男、淡路修三の11名が参加しました。

決勝三番勝負では、武宮正樹が小林光一を2-1で破り、初の挑戦権を獲得。「碁も人柄も尊敬している趙治勲さんと七番勝負を打てるのが嬉しい」と喜びを語りました。

挑戦手合七番勝負

趙治勲棋聖に武宮正樹九段が挑戦する七番勝負は、1985年1月に開幕しました。過去の対戦成績は趙の4勝2敗。

特筆すべきは、第1局がタイトル戦史上初の海外対局として、趙の故郷である韓国のソウルで開催されたことです。この対局は、趙の棋聖位獲得を記念し、また韓日議員連盟からの招請もあって実現しました。会場には多くの報道陣やファンが詰めかけ、熱狂的な歓迎を受けました。

対局はホテル・ロッテのロイヤルスイートルームで行われ、坂田栄男、小林光一、曺薫鉉らが観戦。モニターテレビによる特設観戦場も設けられました。結果は趙が先勝。

その後、第2局は名古屋市、第3局は福岡市で開催され、武宮が連勝。第4局は札幌市で趙が勝利し、タイに戻します。第5局は富山市で行われ、趙が勝利。熱海市で行われた第6局は武宮が制し、再びタイに。最終第7局は東京で行われ、趙が勝利し、4勝3敗で棋聖位を防衛、3連覇を達成しました。

趙は対局後、「武宮さんに追い詰められて、6局目で首が飛んでもおかしくなかった。勝てたのは幸運以外の何物でもありません」と語り、武宮の棋風を高く評価しました。

まとめ

第9期棋聖戦は、趙治勲棋聖が辛くも防衛を果たした激戦でした。特に武宮正樹の独特な棋風は、趙を大いに苦しめました。また、タイトル戦初の海外対局が行われたことも、囲碁界にとって大きな出来事でした。

参考文献
『棋道』日本棋院 1984年12月-1985年5月号
外部リンク
日本棋院「第9期棋聖戦」

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