笹島駅

笹島駅（ささじまえき）は、かつて愛知県名古屋市中村区に存在した日本国有鉄道（国鉄）の貨物駅です。電報略号は「サマ」が用いられていました。地理的には名古屋駅の南側に隣接しており、営業キロの上では名古屋駅と同一地点にある扱いでした。

駅の構造

笹島駅は地上に広がる広大な貨物駅でした。総敷地面積は約16万平方メートルに及び、東海道本線、関西本線、そして中川運河に囲まれた立地に設けられていました。構内には、4面8線のコンテナ貨物用ホーム、2面3線の上屋を備えた貨物ホーム、多数の仕分線が配置されていました。また、駅の南西側、国鉄名古屋工場の南隣には、日清製粉名古屋工場へ続く専用線も敷設され、特定の荷主へのサービスも提供していました。
東海道本線の本線上にある駅として位置づけられていましたが、実際には稲沢駅と西名古屋港駅を結ぶ貨物専用の鉄道路線（後の西名古屋港線）を経由しなければ列車は入線できない構造になっていました。

開設の背景と歴史

名古屋駅はかつて、旅客と貨物の双方を取り扱っており、貨物関連施設は駅の両側に分散して配置されていました。東海道本線、関西本線、中央本線が集まる主要なターミナル駅として、各路線を行き来する貨車の入換作業も名古屋駅構内で行われていました。しかし、輸送量の増加に伴い、名古屋駅での作業が逼迫するようになります。
この状況を解消するため、旅客と貨物の機能を分離し、旅客用の名古屋駅を高架化する計画が進められました。名古屋地区における貨車の入換作業は稲沢駅に新設された稲沢操車場へ移転し、貨物取扱機能は名古屋駅南側、関西本線沿いに建設される新しい駅へと移されることになりました。こうして誕生したのが笹島駅です。
笹島駅は東海道本線の貨物支線である西名古屋港線の起点とも位置づけられ、長年にわたり名古屋地域を代表する主要な貨物駅としての役割を担いました。また、新たに開削された中川運河に隣接していたことから、鉄道貨物だけでなく、水運で運ばれてくる貨物との中継点としても重要な機能を果たしました。

建設は段階的に進められ、1929年（昭和4年）には第1期工事として一部の積卸場が完成。翌1930年（昭和5年）には水陸連絡設備と別の積卸場が完成しました。そして、1937年（昭和12年）2月1日に正式に名古屋駅から分離され、「笹島駅」として開業を迎えます。その後、時代の変化に合わせて取り扱い貨物の種類も変化し、1942年（昭和17年）には小荷物取扱いを開始しますが、1954年（昭和29年）に一度廃止。1961年（昭和36年）にはコンテナ貨物の取扱いを開始し、輸送形態の近代化に対応しました。小荷物取扱いは1974年（昭和49年）に一時再開されたものの、1979年（昭和54年）には再び廃止されています。

廃止とその後の跡地利用

国鉄の貨物輸送体系の見直しと合理化が進められる中で、笹島駅の機能は新しい貨物ターミナル駅へ集約されることになりました。1980年（昭和55年）に開設された西名古屋港線の名古屋貨物ターミナル駅に役割を譲る形で、1982年（昭和57年）11月15日にはコンテナ貨物取扱いが廃止され、そして1986年（昭和61年）11月1日の国鉄ダイヤ改正をもって、車扱貨物取扱いも廃止され、駅はその歴史に幕を下ろしました。

廃止後、広大な駅跡地は様々なイベント会場として活用されました。1992年（平成4年）夏には「キルメス名古屋」、翌年には「キルメス・ファンタジカ」が開催され、その後も木下大サーカスなどの催しが行われています。また、西名古屋港線の旅客化計画に伴い、跡地の一部にささしまライブ駅が設置され、2005年（平成17年）には愛知万博のサテライト会場「デ・ラ・ファンタジア」の会場としても利用されました。これらの暫定的な利用を経て、駅跡地は「ささしまライブ24地区」として大規模な再開発が進められることになります。現在、跡地にはグローバルゲートなど、高層ビルや商業施設、大学キャンパスなどが立ち並び、かつての貨物駅の面影はなくなりました。

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