笹部新太郎

笹部新太郎の生涯と業績

笹部新太郎（1887年1月15日 - 1978年12月19日）は、日本の著名な植物学者で、特に桜の研究に深く関わった人物です。彼は日本の桜の古来種、特にサトザクラやヤマザクラの保護育成を志し、多くの功績を残しました。そのため、彼は「桜博士」と称されています。

生い立ち

笹部新太郎は、大阪市の北区堂島船大工町で生まれました。彼は西天満小学校から盈進高等小学校、さらに堂島中学校（現在の北野高校）や第七高等学校造士館を卒業し、東京帝国大学法科大学政治学科へと進学しました。在学中には専攻とは別に、独学で桜の研究に没頭しました。彼の研究心は、学生時代からすでに芽生えていたのです。

卒業後、彼は犬養毅の秘書としての職務を経て、兵庫県宝塚市にある切畑長尾山の麓に「亦楽山荘」という名の桜の研修地を設けました。その場所では桜の品種保存の研究が行われ、多くの実績が蓄積されました。しかし、彼の死後、その場所は雑木林に戻ってしまいました。

宝塚市は1999年にその跡地を里山公園「桜の園」として再整備し、ボランティア団体「櫻守の会」が手入れを行っています。

研究と成果

笹部は、多くの著名な人物と交流を持ち、特に「東京さくらの会」や渋沢栄一、後藤新平などと関係を築きました。彼は京都府向日町にも「桜苗圃」を設け、日本固有種の桜の保護育成に努めました。彼は、「ソメイヨシノばかりが日本の桜ではない」と主張し、多くの固有種や古来種の重要性を訴え続けました。

彼は1958年に自伝『櫻男行狀』を発表し、自身の人生や業績を振り返る機会を持ちました。

1960年には御母衣ダムの建設に際し、推定樹齢450年のエドヒガン桜の移植を成功させ、この桜は後に「荘川桜」と名付けられました。この業績は、彼の桜への情熱を示しています。

さらに、彼は1966年に神戸新聞平和賞の文化賞を受賞し、1967年からは作家水上勉のモデルとして毎日新聞に『櫻守』が連載され、知名度が高まりました。

最期と遺産

笹部新太郎は1978年12月19日に91歳で老衰により亡くなりました。彼が生涯を通じて収集した数千点に及ぶ桜に関する工芸品や研究資料は、遺言により西宮市に寄贈され、現在は財団法人白鹿記念酒造博物館に所蔵されています。

彼の功績と情熱は、今日の桜文化や研究に大きな影響を与えています。桜の保護と育成の重要性を説いた笹部の生涯は、今でも多くの人々に感銘を与え続けているのです。

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