箕面川ダム

箕面川ダム（みのおがわダム）

大阪府箕面市、一級河川である淀川水系箕面川に位置するダム。大阪府が管理する府営ダムであり、高さ47メートルのロックフィルダム形式を採用しています。主な建設目的は、箕面川およびその合流先である猪名川における洪水の調節と、箕面川の流水機能を維持することにあり、国からの補助を受けて建設された補助治水ダムに分類されます。ダムによって誕生した人造湖は「ゆうゆうレイク」と命名されており、ダム周辺一帯は明治の森箕面国定公園に指定されています。

地理

箕面川は、西日本有数の大河川である淀川の支流である神崎川に合流する猪名川に流れ込む、比較的小規模な支流です。北摂丘陵の明ヶ田尾山と鉢伏山を水源として山地を流れ下り、大阪府の箕面市、池田市、豊中市を経て、兵庫県伊丹市を通過し猪名川に注ぎます。全長は約15.0キロメートル、流域面積は約23.6平方キロメートルで、その約半分は山地ですが、下流部では都市河川の様相を呈しています。途中には、名勝として知られる箕面の滝があり、その周辺地域は明治の森箕面国定公園にも指定されているため、大阪府民にとって親しみ深い行楽地となっています。

沿革

箕面川の上流部は比較的険しい峡谷を形成する一方、下流部は大阪市の近郊住宅地として、第二次世界大戦後に人口が急増しました。このような地理的条件と流域の急速な都市化は、集中豪雨や台風による水害に対して流域を脆弱にし、宅地の増加によって河川改修も困難な状況にありました。特に1967年（昭和42年）7月には、大阪府北部、いわゆる北摂地域を襲った集中豪雨（北摂豪雨）により、造成が進んでいた千里ニュータウンをはじめとする猪名川流域で多数の河川が氾濫し、死者を出すなど甚大な被害が発生しました。

この北摂豪雨を契機に、大阪府は当時の黒田了一知事のもと、猪名川流域の根本的な河川改修計画を推進することを決定しました。しかし、猪名川本流の主な流域は兵庫県内にあり、大阪府単独での大規模な対応が難しかったため、大阪府内を流域とする猪名川支流の箕面川、および猪名川と同様に神崎川へ合流する安威川を対象とした河川改修が進められることになりました。しかし、大阪市内から約20キロメートル圏内の近郊住宅地として宅地化が著しく進み、さらに1970年（昭和45年）の日本万国博覧会を契機に、名神高速道路、東海道新幹線、大阪国際空港などが整備され物流拠点ともなった下流部において、堤防強化や川幅拡張といった河川改修を行うには、住宅、工場、道路、鉄道などの大規模な移転が必要となり、莫大な補償費が見込まれることから、事実上実現は不可能に近い状況でした。

そこで大阪府は、下流での河川改修よりも費用対効果に優れるダムによる治水対策を選択しました。箕面川と安威川にダムを建設し、下流地域への洪水影響を抑制する計画が立てられました。こうして計画されたのが箕面川ダムと安威川ダムであり、箕面川ダムは箕面の滝のすぐ上流部にて、1968年（昭和43年）より建設が開始されました。

目的と環境対策

ダム建設予定地には人家や耕作地がなかったため、一般的な生活再建に伴う補償はほとんど発生しませんでした。しかし、当該地域は1967年に明治の森箕面国定公園に指定されており、特に国定公園特別地域内に位置していたことから、環境保護への対策が大きな課題となりました。このため、大阪府は建設に先立ち広範な環境調査を実施し、箕面の滝の水質維持、周辺山林の緑化促進、さらにはニホンザルの生態系保全などに特別な注意を払う方針を定めました。

1972年（昭和47年）にはダム本体工事が始まりましたが、本体建設にあたっても大阪府は自然環境保全に関する基本方針を策定し、可能な限り早期に植林などの緑化対策を実施することで、自然環境を迅速に回復させる方針を取りました。ダムの形式については、建設予定地の地盤が砂岩や粘板岩など比較的軟弱であったため、経済性を考慮して土砂や岩石を主材料とするロックフィルダムが採用されました。この形式のダムでは、材料を採取する原石山からの環境影響が懸念されるため、原石山についても慎重な対策が講じられました。ダム本体の建設完了後、原石山跡地では速やかに植林などの緑化活動が行われ、環境の早期復元が図られました。ダムは1983年（昭和58年）に完成しましたが、こうした継続的な環境対策によって、箕面川ダム周辺の緑化は比較的早い段階で進行しました。これらの取り組みは高く評価され、1993年（平成5年）には環境庁（現在の環境省）より環境賞を受賞しています。

ダムの最大の目的は洪水調節です。北摂豪雨を基準とした計画に基づき、ダム地点において毎秒125立方メートルのピーク流量のうち、毎秒109立方メートルをダムで貯留し、下流へは毎秒16立方メートルに抑制して放流します。これにより、治水基準点である石橋地点においては、毎秒400立方メートルの洪水を毎秒315立方メートルまで減少させる役割を担っています。また、毎秒0.08立方メートルから0.14立方メートルの水量を常に放流することで、箕面川の流量を一定に保ち、川が涸れることを防ぎ、生態系を保護する不特定利水としての目的も併せ持ちます。

これらの目的はいずれも治水に関するものであり、多目的ダムのように上水道や工業用水の供給、水力発電といった利水目的は有していません。このように治水に目的を限定したダムを治水ダムと呼びますが、箕面川ダムは国庫の補助を受けて建設された補助治水ダムです。この制度は1968年に開始され、秋田県の旭川治水ダムなどを皮切りに各地で建設されましたが、箕面川ダムはその初期の事例の一つです。なお、箕面川ダムと同時期に計画された安威川ダムは、水没予定地の住民による反対運動が長期化したため、建設が大幅に遅れ、本体工事着手は2014年となりました。また、箕面川ダム完成と同じ1983年には、猪名川上流の支流である一庫大路次川に一庫ダムが完成し、流域全体の治水能力が強化されました。一方で、同じ猪名川支流の余野川に計画されていた余野川ダムは2008年に建設が中止されています。

ゆうゆうレイク

箕面川ダムによって形成された人造湖は、1988年（昭和63年）に「ゆうゆうレイク」と命名されました。人造湖の名称に「レイク」とカタカナが使われたのは、日本のダム湖としては箕面川ダムが唯一の事例であり、ひらがなとカタカナのみで命名された点も日本で唯一であるという特徴的な名前です。「ゆうゆう」という言葉には、「遊ぶ（遊）」と「ゆったり過ごす（悠）」の両方の意味が込められており、高齢者や子供を含む多くの人々が憩える場所になってほしいという願いが託されています。

ダムとゆうゆうレイクは明治の森箕面国定公園の中にあり、すぐ下流には箕面の滝をはじめとする箕面渓谷が広がっています。春の新緑や秋の紅葉の時期は特に美しく、ダム下流にある駐車場から箕面渓谷沿いの遊歩道を散策できるため、多くのハイキング客で賑わいます。この遊歩道からはダムの直下まで行くことも可能です。ただし、ゆうゆうレイクでは管理上の理由から、陸上・湖上を問わず釣りは一切禁止されています。しかし、この規制にもかかわらず、立ち入り禁止区域に侵入して釣りを行う者が後を絶たず、問題となっています。

アクセス・周辺情報

箕面川ダムおよびゆうゆうレイクへの公共交通機関でのアクセスは、阪急千里線北千里駅または北大阪急行・千里中央駅から阪急バス29系統（北摂霊園または希望ヶ丘四丁目行き）を利用し、「勝尾寺」バス停で下車後、徒歩となります。バスの本数が少ないことに加え、正月三が日やお盆期間は周辺道路の著しい渋滞のため運休となる場合が多く、その際は箕面市内の麓にあるバス停で下車し、そこから登山道を徒歩で向かう必要があるため注意が必要です。自家用車を利用する場合は、府道43号線または府道4号線を勝尾寺方面へ向かいます。ただし、この地域はニホンザルが多く生息しており、道路上に出没することもあるため運転には十分な注意が必要です。また、いかなる場合であってもサルに餌を与えることは箕面市の条例で禁止されています。自家用車での訪問の場合、特に正月三が日やお盆期間は勝尾寺へ向かう参拝客の車で周辺道路が非常に渋滞するため、訪問時期には注意が必要です。ダム自体には駐車場は一切ありません。付近は交通量が多く、路肩駐車は追突の危険を伴います。ダム訪問にあたっては、これらの状況を理解し、自己責任で行動する必要があります。

観光としては、前述の通り釣りは禁止されており、ダムの全景を撮影できる場所も限られています。麓へ降りる道も柵で閉鎖されています。

もう一度検索