箕面有馬電気軌道1形電車

箕面有馬電気軌道1形電車

箕面有馬電気軌道1形電車は、1910年から1911年にかけて阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道によって製造された木造電車の一群です。計33両が新たに作られましたが、これらは製造時期や構造の違いから、厳密には1形と19形の二つの形式に分けられています。しかし、経歴が共通するため、ここでは一括してその歴史を辿ります。また、この1形車両の一部は1949年から1950年にかけて京阪電気鉄道に譲渡され、10型車両として運行されました。

創業の背景

箕面有馬電気軌道は、1906年3月に公布された鉄道国有法により国家に買収されることになった阪鶴鉄道の役員によって設立されました。1900年代は大阪周辺での電気鉄道開業ラッシュの時代であり、当時の先発機関である阪神電気鉄道に倣って都市間交通を目指していたものの、主に観光客の輸送に重きを置いていたことが特徴です。これにより運行形態がアメリカのインターアーバンに似ていたとされています。

電車の概要

箕面有馬電気軌道は、1910年3月10日に梅田と宝塚間、そして石橋から箕面間の運行を開始しました。それを受けて製造されたのが1形電車です。最初に製造された1から18号は川崎造船所兵庫工場で、次の19から28号は汽車製造会社で作られ、1911年に29から33号が追加で製造されました。1形と呼ばれるこれらの車両は、全長13.5メートルの木造車体を持ち、密閉式運転台と3枚の窓を持つ前面デザインが特徴的でした。

車体とデザイン

この時代の電車は多くが路面から直接乗り込む方式でしたが、1形電車は密閉式運転台を採用し、プラットホームから直接乗車できることが特徴です。外観はマルーン色に塗装され、腰板部や社章周囲に金線で装飾が施されています。車両内の座席はロングシートで、モケットには社章入りの赤褐色の布が貼られ、床はリノリウム仕上げになっています。増備車の19形は、飾り窓の形状や前面デザインに微細な変更がありました。

機器と運用

1形電車は、連結運転が可能な機器を備えており、制御装置にはGE社製のMK電磁単位スイッチ式間接制御器、主電動機はGE社製のGE-90を採用していました。台車は米国J.G.ブリル社製のブリル27E-1で、集電装置はトロリーポールを使用。併用軌道区間では複架線方式に対応していました。

運用の歴史

1910年の開業以来、1形電車は宝塚線と箕面線の全線で使用されましたが、1923年から2両連結運転が始まり、改造が施されました。この改造には、貫通路の設置や自動連結器の設置が含まれ、大阪市内の併用軌道区間での運用に合わせて集電装置の変更も行われました。1926年からは簡易半鋼製車体化が進められ、鋼板の追加や自動化改造が実施されました。

長命と終焉

1949年から1950年にかけて、京阪電気鉄道に譲渡された後は、京阪10型として運行されましたが、後に消えゆく運命を辿りました。電動貨車として再利用されたり、車両の半鋼製化が行われる過程で、少なくとも一部は移行しました。最終的には全ての1形電車が廃車されることになり、その長い歴史を閉じました。

現在の状況

現存する1形電車は阪急創業50周年を記念して保存された車両で、現在は宝塚ファミリーランドでの展示以来、正雀工場に保管され、特別イベント時に展示されることとなっています。これは阪急電鉄の創業当初の貴重な文化遺産であり、今でも多くの鉄道ファンに親しまれています。

このように、箕面有馬電気軌道1形電車は、阪急電鉄の歴史の中で重要な役割を果たしてきた車両であり、その運行の背景や特徴は今なお語り継がれています。

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