米問屋

米問屋（こめどいや/こめどんや）

[米]]問屋とは、米の卸売を専門とする業者です。江戸時代には「廻米問屋」とも呼ばれていました。この記事では、江戸時代から明治時代にかけての日本の米問屋について詳しく解説します。現代の米穀店については、[米穀店を参照してください。

江戸時代の米問屋

総説

江戸時代は、幕藩体制のもとで石高制が採用されていました。幕府や藩の財政は、年貢として集められた米の販売に大きく依存していました。時代が進むにつれて、都市部での米の消費量が増大し、農村部でも米の商品化が進みました。その結果、江戸や大坂を中心に、全国を結ぶ米流通ネットワークが構築され、米問屋や米仲買がその仲介役として重要な役割を果たしました。

米問屋や米仲買は、株仲間を結成することで特権的な地位を確立していました。しかし、明治時代に入り、地租改正によって租税が金納化されたことや、人口の変動、鉄道建設による輸送・流通の変化に対応できず、没落する米問屋も少なくありませんでした。

江戸の米問屋

江戸には、300から400軒程度の米問屋が存在したと考えられています。これらの米問屋は、仕入れる米の生産地によって、大きく3種類に分けられていました。

下り米問屋: 大坂や東海地方、北陸地方以西の57ヶ国から船で運ばれる廻米を買い上げ、米仲買に販売していました。当初は8軒でしたが、寛政年間に6軒増加が認められました。
関東米穀三組問屋: 関東地方や陸奥国9ヶ国からの商人米を担当し、小網町・小舟町・堀江町を拠点に活動していました。
地廻米穀問屋: 関東米穀三組問屋と同じ地域を担当していましたが、より小規模で、江戸の各地に点在していました。関東米穀三組問屋から間接的に仕入れたり、米仲買や舂米屋（小売商）を兼ねたりするなど、数が最も多かった。

これらの他に、千住宿や板橋宿などを拠点とし、関東米穀三組問屋や地廻米穀問屋の流通に乗りにくい江戸近辺の農村部の米穀を買い付ける陸附米穀問屋もありました。

なお、幕府や旗本などの蔵米は、札差から米仲買に直接販売されていたため、米問屋を経由することはありませんでした。

大坂の米問屋

大坂では、諸藩が集めた年貢米が、まず自藩の蔵屋敷に収められ、そこで米問屋に販売されるのが一般的でした。つまり、江戸において米問屋が果たしていた役割を、大坂では蔵屋敷が担っていたと言えます。そのため、大坂の米問屋は、実質的には米仲買に近い立場にありました。

堂島米会所では、帳合米商の幕府公認後に出された1300株を購入し、帳合米商と正米商を兼ねる者を米問屋と称し、それ以外の者を米仲買と称していました。堂島米仲買は、蔵屋敷から手に入れた蔵米を、江戸の下り米問屋をはじめ、日本各地の米市場に向けて販売していました。

その他に、京都・伏見方面に専門で米を販売する上問屋や、大坂近辺の村部の米穀を買い付けて大坂に販売する納屋物雑穀問屋も存在しました。納屋物雑穀問屋は、納屋米の生産増大に伴い、次第に発言力を増し、天保6年（1835年）には独自の株仲間を作ることが許されました。

その他の地域の米問屋

京都や大津、伊丹、名古屋、兵庫、赤間関（下関）、尾道、敦賀、銚子、桑名、酒田など、港湾都市や消費地にも米問屋が存在しました。

北陸地方から京都に米を輸送する経路上にあった大津は、近世初期には江戸・大坂を凌ぐ米市場を擁し、享保年間には大坂に続いて幕府公認の帳合米商を認められるほどでしたが、元禄期に74株あったものが幕末期には17株に減少するなど、衰退しました。

酒田や桑名の米問屋も規模が大きく、周辺地域の貢租米などを扱う米問屋と、近隣の農村の米を扱う陸問屋に分離していました。

明治時代以降の米問屋

地租改正によって年貢が金納化されると、明治時代には各県で米の販売が行われるようになりました。三井組などの商社や廻船問屋が米を買い付け、東京に輸送・販売する方式が取られるようになり、1886年には東京廻米問屋市場が深川に設立され、東京における米相場は深川で決まるようになりました。

1890年代になると、鉄道輸送が主流となり、東北から上野へ鉄道が開通し、東北の米は船ではなく鉄道で秋葉原に運ばれるようになりました。秋葉原からは船で深川の倉庫群へ運ばれるシステムとなりました。

当時の米問屋は、各地から大量の米を委託されて扱う「委託問屋」、自分で産地から直接米を仕入れて扱う「買付問屋」、そしてこれらを兼業する問屋の3つの形態がありました。

大正10年の米穀法、昭和8年の米穀統制法、昭和11年の米穀自治管理法、昭和14年の米穀配給統制法などの法律が制定され、昭和17年には食糧管理法が制定されました。これにより、食糧営団（後に食糧配給公団を経て民営化）が設立され、米問屋は整理統合されることとなりました。

参考文献

北原進「米問屋」『国史大辞典 6』（吉川弘文館 1985年） ISBN 978-4-642-00505-0
本城正徳「米問屋」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年） ISBN 978-4-582-13104-8
本城正徳「米問屋・米仲買」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年） ISBN 978-4-09-523002-3
持田恵三「明治期の米穀市場」

関連項目

米価
米相場
正米商

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