米山薬師 (姶良市)

米山薬師の歴史と変遷

米山薬師の創建

米山薬師は、かつて鹿児島県姶良市鍋倉に存在した薬師如来を祀る仏堂でした。その起源は15世紀に遡ります。島津季久の四男である島津守興（起宗和尚）が、薬師如来を深く信仰し、諸国を巡礼していた際、越後国の米山薬師を参拝した際に、一人の僧侶から仏像を授かりました。帰郷した守興は、その仏像を安置するため、越後の米山薬師に地形がよく似た平安城南方の山に堂を建立しました。これが帖佐の米山薬師の始まりとされています。

現在、この付近の住所は鍋倉ですが、地域では米山薬師にちなんで「米山」という通称が用いられており、バス停の名前にもその名残を見ることができます。

火災と再建

1749年（寛延2年）12月12日、不慮の火災により本堂が全焼し、安置されていた仏像も焼失するという大きな被害を受けました。しかし、地域の人々の寄付などにより、1752年（宝暦2年）8月には再建を果たしました。再建された本堂には、島津久起が新たに造り寄進した本尊が祀られました。

廃仏毀釈と米山神社への転換

明治維新後、日本全国で廃仏毀釈の嵐が吹き荒れる中、米山薬師もその例外ではありませんでした。薬師堂は破壊され、本尊は密かに隠されたという説もありますが、現在その姿を確認することはできません。その後、米山薬師は米山神社として再興されました。しかし、地域の人々にとって、今もなお「米山薬師」の名で親しまれています。

疱瘡の神様としての信仰

米山薬師は、古くから疱瘡（天然痘）の神様として知られており、地元では「ホソンカンサァ（疱瘡の神様）」と呼ばれていました。中腹にある井戸から湧き出る水は、天然痘を防ぐ効果があるとされ、人々は湧き水を飲んだり体に塗ったりしてそのご利益を願いました。天然痘が流行する時期には、多くの参拝客が訪れ、特に1926年（大正15年）に鹿児島県で天然痘が大流行した際には、毎日1000人を超える参拝客で賑わったと言われています。

現在の米山神社

1951年（昭和26年）にはルース台風により社殿が倒壊しましたが、翌1952年に修復が行われました。その際、仏師に依頼して薬師如来像が再び祀られ、現在は神仏同座の形となっています。これにより、米山神社は神道と仏教の両方の要素を持つ、独特の信仰の場となっています。

アクセス

米山神社へは、帖佐小学校の裏手にある登山口からアクセスできます。険しい岩山をロープを頼りに10分ほど登る必要があります。また、平安城跡の桜公園から下る山道も利用可能です。

まとめ

米山薬師は、その歴史の中で、仏堂から神社へと姿を変えながらも、地域の人々の信仰を集め続けてきました。廃仏毀釈という歴史の波に翻弄されながらも、その名前は今もなお地域に根付き、人々の心の拠り所となっています。米山薬師は、薩摩藩の三薬師の一つとして、また疱瘡の神様として、その名を歴史に刻み続けています。

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