米軍燃料輸送列車事故

米軍燃料輸送列車事故の概要

1967年8月8日午前1時45分、新宿駅構内で、在日米軍立川基地へ向かうジェット燃料輸送貨物列車が、別の貨物列車と衝突し炎上する事故が発生しました。

事故発生状況

山手貨物線から中央快速線へ進入しようとした下り貨物列車（第2471列車）の側面に、中央快速上り線を走行してきた貨物列車（第2470列車）が、停止信号を無視して衝突しました。第2471列車はジェット燃料を満載しており、一方の第2470列車は石灰石を積載していました。衝突により、第2471列車の複数のタンク車が脱線、転覆し、漏れ出した燃料に引火して大爆発が発生しました。

事故現場は炎に包まれ、周辺30メートルが火の海と化しました。停電によりポイントの切り替えが困難になる中、関係職員の尽力により手動でのポイント操作やディーゼル機関車による貨車の退避が行われました。しかし、72トンもの航空燃料が燃えたことで火災旋風が発生し、消火活動は難航。鎮火までに2時間以上を要しました。

事故による影響

鎮火後も現場周辺には可燃性ガスが充満し、復旧作業は大幅に遅れました。中央線は丸一日以上不通となり、国電1,100本が運休、約200万人に影響が出ました。事故原因は、第2470列車運転士の信号見落としとブレーキ操作の遅れでした。

事故後の対策

この事故を教訓に、国鉄は安全対策を強化しました。当時、ATSは設置されていたものの、確認ボタンを押せば赤信号を無視できるなど、安全性が低いシステムでした。そのため、確認後の注意喚起機能の追加や、ATS-S形への対策として、場内信号直下に警報装置が設置されました。タンク車の安全弁が破損しやすいという問題点も指摘され、弁類を内蔵化する対策が取られました。

事故車両

事故で廃車となったタンク車4両は、いずれもタキ3000形でした。うち1両は国鉄所有でしたが、残る3両は私有貨車でした。特筆すべきは、米国陸軍輸送隊が所有していた2両については、金銭賠償ではなく国鉄所有の同型車両を無償譲渡するという異例の措置が取られたことです。

政治運動への影響

この事故は、米軍燃料輸送に対する反発を強めるきっかけとなりました。米軍の燃料がベトナム戦争に使われているという背景もあり、在日米軍が日本国民の安全を危険に晒しているという批判が高まりました。「米タン阻止」は、反戦運動や学生運動のスローガンとして広まりました。

事故後、国鉄労働組合は遵法闘争を行い、1968年には新宿騒乱事件が発生しました。さらに、ジェット燃料輸送列車を狙った襲撃事件も発生するなど、社会に大きな影響を与えました。

現在も、米軍基地へのジェット燃料輸送は行われています。

まとめ

米軍燃料輸送列車事故は、安全対策の不備、事故後の対応、そして社会への影響など、多くの問題を浮き彫りにしました。この事故を教訓に、安全対策の強化と、社会全体の意識向上が求められます。


関連項目
立川飛行場
新宿騒乱

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