粟屋謙

粟屋謙（あわや けん）

粟屋謙は、1883年（明治16年）3月21日に生まれ、1938年（昭和13年）4月2日に亡くなった日本の文部官僚です。特に、滝川事件が発生した際の文部次官であったことで知られています。山口県下関市長府の出身で、旧長府藩の報国隊を組織した野々村勘九郎を祖父に持ちます。

生い立ちと学歴

粟屋謙は、旧長府藩士で教員であった粟屋平一の長男として東京で生まれました。彼は豊浦中学、第三高等学校を経て、1907年7月に東京帝国大学法科大学法律学科（独法）を卒業し、大学院へ進学しました。この学歴からも、彼が当時非常に優秀な人物であったことがうかがえます。

官僚としてのキャリア

大学院在学中の1907年7月には内務省に入省し、東京府属となります。同年11月には文官高等試験に合格し、内務属、茨城県事務官を歴任しました。その後、1911年5月に文部省に転じ、文部書記官兼文部省参事官に就任しました。

1913年には、宗教局が内務省から文部省に移管されたことを受け、宗教法制定に尽力しました。その後、名古屋高等商業学校校長事務取扱、文部省宗教局長、同実業学務局長、同専門学務局長などを歴任し、教育行政の中心人物として活躍しました。

特に、1927年から1929年と1931年から1934年の間は文部次官を務め、文部行政の最高責任者の一人としてその手腕を発揮しました。この間、1932年には国民精神文化研究所の初代所長（代行）にも就任し、戦時下の国民精神形成にも関わりました。また、1934年には恩賜財団愛育会の設立にも文部次官として参画しました。

これらの業績により、粟屋謙は従三位勲二等の位を授与されました。

家族

粟屋謙の妻は、工学者である藤岡市助の娘、粟屋米子です。

参考文献

豊浦高等学校沿革史編纂委員会編『豊浦高等学校沿革史』豊浦高等学校、1964年。
秦郁彦編 『日本近現代人物履歴事典』 東京大学出版会、2002年5月、ISBN 4130301209。

関連文献

「粟屋謙君」（井関九郎撰 『現代防長人物史 人』 発展社、1917年12月）
井関九郎編 『近代防長人物誌 人』 マツノ書店、1987年2月
* 『職業指導』第11巻第5号、大日本職業指導協会、1938年5月


粟屋謙は、日本の教育行政に多大な貢献をした人物であり、そのキャリアは文部官僚としての模範とも言えるでしょう。彼の功績は、日本の近代教育史において重要な位置を占めています。

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