紀元前415年

紀元前415年：激動の時代

紀元前415年は、ローマ暦において特筆すべき出来事のなかった年として記録されています。当時のローマでは、コッスス、ウイブラヌス、ウオルスス、キンキナトゥスの4名が護民官に就任しました。この時代、西暦紀年法が普及する以前であったため、ローマ建国紀元339年という表記も用いられていたようです。しかし、現代では広く西暦紀年法が用いられ、この年は紀元前415年として認識されています。

この年は、世界各地で様々な出来事が発生した年でもありました。特に、古代ギリシアにおいては、ペロポネソス戦争のさなか、数々の重要な出来事が起こりました。

ギリシア：アテナイの栄光と凋落

まず注目すべきは、アテナイによるシケリア遠征です。アテナイの著名な将軍であるニキアス、ラマコス、そしてアルキビアデスが率いる大規模な遠征軍がシケリア島へと出撃しました。この遠征は、アテナイにとって大きな期待と同時に、破滅への道を暗示する出来事でもありました。

遠征開始前には、アテナイで「ヘルマ」と呼ばれるヘルメース柱像破壊事件が発生しました。この事件は、アテナイ社会に大きな衝撃を与え、政治的混乱を引き起こしました。雄弁家として知られたアンドキデスは、この事件に関与した嫌疑で投獄され、証言を強要されました。その証言は、アルキビアデスをはじめとする多くの者に死刑判決をもたらしました。アンドキデス自身もアテナイを追放される結果となりました。

シケリア遠征軍は出港後、アルキビアデスが神を冒涜したという告発を受け、アテナイへの帰還を命じられました。アルキビアデスは、自分が欠席裁判で死刑判決を受けたことを知ると、アテナイへの帰還を拒否し、スパルタへと亡命しました。これにより、遠征軍の指揮はニキアスが引き継ぐこととなりました。

シケリア島に上陸したアテナイ軍は、シュラクサイ（シラクサ）近郊のダスコンに上陸しましたが、思うような成果を得ることはできませんでした。シュラクサイの防衛軍は、ヘルモクラテスによって率いられ、アテナイ軍の進撃を頑強に防ぎました。

スパルタに亡命したアルキビアデスは、スパルタ軍に積極的に参加し、シュラクサイ支援のためにギュリッポスを派遣すること、そしてアッティカのデケレイアを要塞化することを提案しました。さらに、イオニアの諸都市に対し、アテナイへの反乱を扇動しました。アルキビアデスの働きかけにより、スパルタ艦隊がシュラクサイを支援し、その後は膠着状態が続きました。

文化：エウリピデスの悲劇

この年には、アテナイを代表する悲劇詩人エウリピデスの作品『トロイアの女』が上演されました。この作品は、紀元前416年に発生したメロス島住民虐殺（メロス包囲戦）の直後に上演され、戦争の残酷さと悲劇性を浮き彫りにしたと考えられています。

世界情勢

紀元前415年は、ギリシアだけでなく、世界各地で様々な出来事が発生した年でした。中国では、周、秦、晋、楚、斉、燕、趙、魏、韓といった諸国がそれぞれの歴史を刻んでいました。日本においても、孝昭天皇の治世下、皇紀246年が経過していました。朝鮮では檀紀1919年、ベトナムでは仏滅紀元130年、ユダヤ暦では3346年から3347年へと移り変わっていました。

干支では丙寅（ひのえとら）の年でした。これらの多様な紀年法は、古代世界における時間認識の多様性を示しています。

まとめ

紀元前415年は、アテナイのシケリア遠征という大事件から、政治的陰謀、戦争、そして悲劇的な舞台芸術の上演まで、様々な出来事が複雑に絡み合った激動の年でした。この年は、古代世界の政治、軍事、文化を理解する上で、非常に重要な年として位置付けられます。

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