紫の肖像

『紫の肖像』（原題: Who Do We Think We Are）は、ディープ・パープルが1973年に発表したアルバムです。この作品は、第2期と呼ばれる時期の最後にリリースされたスタジオアルバムであり、バンドの歴史において重要な意味を持っています。

制作の背景

前作『マシン・ヘッド』の成功後、ディープ・パープルは過酷なツアー日程に追われ、メンバー間の疲弊と不和が深刻化していました。1972年にはアメリカとイギリスでのツアーを敢行し、『マシン・ヘッド』発表後も再びアメリカツアーに出発。しかし、リッチー・ブラックモアの肝炎によりツアーは一時中断、初の日本公演も延期されるなど、困難な状況が続きました。

7月には、新作の制作のためローマの古城に集結。ローリング・ストーンズのモービル・ユニットを使用する予定でしたが、事前の意見調整不足や機材の問題から作業は難航しました。8月の日本公演までの限られた期間で、「ウーマン・フロム・トーキョー」を含む数曲を完成させるのが精一杯でした。

日本公演後もツアーは続き、10月にはフランクフルトで再び制作を試みましたが、ブラックモアとイアン・ギランの不仲など、メンバー間の関係はさらに悪化。疲労とツアーへの不満が重なり、困難を極めました。最終的に、ロジャー・グローヴァーとイアン・ペイスによるミキシング作業を経て、1973年1月にアルバムは発表されました。

アルバムの内容と評価

『紫の肖像』は、内省的なタイトルが示すように、バンドの内面的な葛藤を反映した作品と言えるでしょう。人間関係の悪化からか、ブラックモアのギタープレイは控えめになり、全体的なハードさは前作ほどではありません。一方で、ジョン・ロードのシンセサイザーを駆使した前衛的なキーボードソロが随所にフィーチャーされ、音楽性の幅を広げています。

収録曲の「マリー・ロング」は、イギリスの保守的な政治家を揶揄した曲として知られています。

アルバムは、様々な問題を抱えながらも1973年1月にリリースされ、同時期に発表されたライブアルバム『Made in Japan』の好調な売れ行きに牽引される形で、イギリスで4位、アメリカで15位まで上昇し、ゴールドディスクを獲得しました。

音楽評論サイトのオールミュージック (AllMusic) は、「ウーマン・フロム・トーキョー」と「ラット・バット・ブルー」のみを評価し、「ウーマン・フロム・トーキョー」については「リッチー・ブラックモア独特のリフが過ぎ去った輝きを彷彿とさせる」と評しています。

第2期の終焉

ギランは1973年6月30日をもってディープ・パープルを脱退することを表明。グローヴァーも解雇されることを知り、自ら脱退の道を選びました。6月25日の日本武道館公演では、アンコールが行われなかったことに観客が激怒し、会場を破壊する騒ぎが発生。翌日の公演は中止となりました。そして、6月29日の大阪厚生年金会館での公演を最後に、ギランとグローヴァーは脱退し、ディープ・パープルの第2期は幕を閉じました。

『紫の肖像』は、ディープ・パープルの歴史において、ターニングポイントとなる作品であり、その後のバンドの方向性に大きな影響を与えました。

収録曲
1. ウーマン・フロム・トーキョー
2. マリー・ロング
3. スーパー・トゥルーパー
4. スムース・ダンサー
5. ラット・バット・ブルー
6. プレイス・イン・ライン
7. アワ・レディ

メンバー
リッチー・ブラックモア (ギター)
イアン・ギラン (ボーカル)
ロジャー・グローヴァー (ベース)
ジョン・ロード (キーボード)
* イアン・ペイス (ドラムス)

もう一度検索