網走番外地 (曲)

網走番外地

「網走番外地」は、1965年に高倉健がリリースしたシングルで、同名映画の主題歌として広く知られています。この曲は、映画とともに大ヒットを記録しましたが、その裏側には、様々な問題を抱えていました。

概要

「網走番外地」は、1965年に公開された映画『網走番外地』の主題歌として、高倉健によって歌われました。レコード売上は公称200万枚を記録する大ヒットとなりました。しかし、歌詞の内容が犯罪を肯定し、反社会的な風潮を助長する恐れがあるとして、日本民間放送連盟の内部規定である要注意歌謡曲指定制度によって、放送禁止となるAランク指定を受けました。これは、「退廃的、虚無的、厭世的言動を、肯定的または魅力的に表現したもの」に該当すると判断されたためです。

さらに、テイチクレコードがレコード制作倫理委員会（レコ倫）を通さずに発売したことが業界内で問題視されました。その後、キングレコード、テイチクレコード、クラウンレコードから発売されましたが、1972年には各社間での協議により、自主規制として以降のレコード化は行われなくなりました。この自主規制は、1980年代末に同制度が廃止されるまで続きました。

歌詞には2種類が存在し、1965年版には酒を「きす」、娘を「スケ」など、ヤクザの隠語が含まれていました。この歌詞は、1979年まで先の制度の指定を受けていました。

1970年代半ばには、生放送のワイドショーにWBC世界ライト級王者ガッツ石松が出演した際、予定していた曲を急遽変更し、「網走番外地」を歌いました。楽譜の用意もないままバンド演奏が始まりフルコーラスが歌われましたが、出演者やスタッフはこの曲が放送禁止指定を受けていることを知らず、番組終了間際にプロデューサーがその事実を知り青ざめたという逸話も残っています。しかし、この件でテレビ局内で処分を受けた人間はおらず、問題には発展しませんでした。

同じくヤクザを題材にした楽曲である、藤純子の「緋牡丹博徒」や北島三郎の「仁義」は、要注意歌謡曲指定制度の審査対象にはなったものの、指定は受けませんでした。そのため、「『網走番外地』が放送禁止で、なぜ『緋牡丹博徒』や『仁義』は放送可能なのか」という意見も出ていました。

長年のファンからの要望に応え、2014年 12月31日にオリジナル盤を復刻したCDシングルが発売されました。オリジナルのジャケットデザイン2種類も、折込型のWジャケットとして復刻されています。

主題歌が起用されるまでの経緯

「網走番外地」の原曲は、1931年に橋本国彦が「足利龍之助」の変名で作曲し、ビクターから発売された「レビューの踊子」（同名日活映画の主題歌）です。東映宣伝部のOBだった吉田信が、岡田茂東映取締役（当時）に山田栄一を紹介し、山田が「網走番外地」の曲を持ってきたことがきっかけで、この曲が採用されることになりました。当時、山田は「この曲は作者不詳だが流行っている。これをうちのものにすれば著作権も得られる」と提案しました。

企画者の今田智憲は、主題歌に強いこだわりを持ち、企画段階から高倉健に歌ってほしいと考えていました。しかし、照れ屋の高倉が断ることは容易に予想できたため、石井輝男が説得に当たりました。高倉の歌がなければ、『網走番外地』はヒットしなかったと言われるほど、高倉の歌声は重要な要素でした。高倉は、シリーズのすべての作品でこの主題歌を歌い、テイチクから発売されたレコードも大ヒットしました。他にも数人がレコードを発売しましたが、高倉以外はヒットしませんでした。

本作の前に石井が監督した映画『顔役』（1965年 1月3日公開）でも、この曲が使用されました。日活版の『網走番外地』には歌がなかったため、『顔役』で初めて映画の中で歌われました。最初に映画で歌ったのは三田佳子で、『顔役』でオルガンを弾きながら歌い、次第に知られるようになりました。また、これより少し前には、NHKのドキュメンタリー番組『現代の映像』で、「兄貴と若い衆」というタイトルの回で、若い衆が網走刑務所で覚えた歌として、ギターを弾きながらこの曲を歌っていました。この番組は高視聴率を記録したといわれています。番組で使われたテープを借りるため、チーフ助監督だった内藤誠がNHKに訪れた際、金を受け取ってもらえず、代わりに6000円の商品券を若者に渡してくれと頼まれたというエピソードも残っています。

1980年代に入り、SP盤コレクターとして知られる井上幸七が「レビューの踊子」と「網走番外地」のメロディが同一であることに気づき、長田暁二も同じ曲と判定しました。これにより、「網走番外地」の原曲が「レビューの踊子」であることが広く知られるようになりました。

収録曲

1. 網走番外地
原作：伊藤一
替歌：タカオ・カンベ
採譜・編曲：山田栄一
2. 流れのブルース
作詞：門井八郎
作曲・編曲：久慈ひろし
歌：三界りえ子

カバー

藤圭子
1970年、渋谷公会堂におけるデビュー1周年記念リサイタルにて歌唱。
同年3rdアルバム「歌いつがれて25年藤圭子演歌を歌う」（JRS-9039～40）に収録。
1971年スタジオ録音盤として、アルバム「圭子の人生劇場」（JRS-7137）に収録。
同1971年、石坂まさを作詞による藤圭子ver.「圭子の網走番外地」としてシングル「知らない町で」（JRT-1197）及びアルバム「知らない町で」（JRS-7177）に収録。
松山千春（2018年、アルバム『北のうたたち』に収録）

脚注

松島利行『風雲映画城』下、講談社、1992年。ISBN 4-06-206226-7。
石井輝男・福間健二『石井輝男映画魂』ワイズ出版、1992年。ISBN 4-948735-08-6。

外部リンク

* 網走番外地 - テイチクエンタテインメントによる紹介ページ

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