緑島郷

緑島郷（リューダオ/りょくとう-きょう）

緑島郷は、台湾本島の東に位置する太平洋に浮かぶ島嶼からなる郷で、台東県に属しています。その中心となる緑島は、安山岩で形成された火山島であり、かつては「火焼島」と呼ばれていました。

地理

緑島は四角形の形状をした火山島で、島の約60%が丘陵地帯または山地です。最高峰は火焼山（標高281m）で、阿眉山（276m）と並び、島の中央部に位置しています。島の自然は、熱帯雨林とサンゴ礁が特徴で、ユーラシア大陸と南洋群島の生物が交わる地点であるため、独特な生態系が育まれています。

歴史

緑島には、漢人が移住する以前から人々が生活していました。約2000年前の新石器時代末期の遺跡からは、石器、石網錘、陶片、石斧などが出土しており、当時の生活を窺い知ることができます。

日本の人類学者である鹿野忠雄氏の研究によると、先史時代から緑島の住民は台湾東海岸のアミ族、プユマ族、クバラン族、ケタガラン族と密接な交流があったとされています。また、遺物や各部族の伝承から、緑島にはアミ族や卑南族が移住し、台湾北部の噶瑪蘭族や凱達格蘭族にも、緑島から移住した祖先がいるという伝承が残っていることがわかっています。

考古学者の宋文薰氏は、緑島の対岸に住む卑南族には緑島に関する伝承は残っていないものの、一部の部族は緑島に関連する祭祀を継承していると指摘しています。

緑島では柚仔湖、呂麻蛟、大白沙、南寮などで遺跡が発見されており、石器や貝器、陶器、人骨が出土しています。特に柚仔湖遺跡は調査が詳細に行われました。宋文薰氏は、緑島がフィリピンから台湾東海岸へ移住する諸民族の移動の中継地点であったと考えています。

漢人の入植は、清代の乾隆年間から嘉慶年間にかけて、小琉球の住民が木材伐採や漁業のために緑島を訪れたのが始まりとされています。1803年には陳必先が30人余りの人々を率いて緑島に入植し、漢人による初の移住記録となりました。その後、漢人の入植が進み、公館の西側には楠仔湖、柚仔湖、大湖、南側には柴口、中寮、南寮などの集落が形成されました。道光年間には草山埔、海参坪、亀湾などの開発も進められ、島全体に開発が広がりました。

台湾文化史によると、喜慶年間に小琉球の漁師たちが漂流し、無人だった火焼島に到着したのが入植のきっかけになったとも伝えられています。

日本統治時代には、台湾浮浪者取締規則によって、職や住居のない人々が火焼島に強制的に移住させられることがありました。1912年には「台東火焼島浮浪者収容所」が設置されましたが、1920年に廃止され、同年には行政事務を扱う役場が設置されました。1914年には郵便局が開設され、1931年には漁業無線局が開局、1939年には灯台が点灯するなど、島のインフラ整備が進められました。

1949年5月21日には、島の名称が「火焼島」から「緑島」に改称されました。

台湾光復後、中華民国政府は台湾省に戒厳令を敷き、緑島には政治犯を収容するための施設が設置されました。一般市民の渡航は制限され、島は特別な場所となりました。

1951年から1965年まで、思想改造や労働更生を目的とした「新生訓導処」が設置され、女性収容者の状況をテーマにした映画『流麻溝十五号』も制作されています。また、最盛期には2000人もの人々が収容された「緑洲山荘国防部緑島感訓監獄」は、1972年から1987年まで設置されていました。

1980年代に戒厳令が解除されると、緑島は観光地として発展し始めました。現在では、新生訓導処と緑洲山荘を含む区域が「緑島人権文化園区」として整備され、2003年には「人権記念公園」が開設されました。

緑島は、台湾や中国で有名な歌「緑島小夜曲」の舞台としても知られています。

経済

緑島の主な産業は観光業です。美しい自然と歴史的な場所を訪れる観光客で賑わっています。

行政区

緑島郷は台東県に属する郷です。

歴代郷長

歴代の郷長については、ここでは割愛します。

教育

島内には以下の教育機関があります。

台東県立緑島国民中学
台東県立緑島国民小学
台東県立公館国民小学

交通

緑島へは、飛行機またはフェリーでアクセスできます。飛行機の場合、台東空港から緑島空港まで約15分で到着します。フェリーの場合、台東市の富岡漁港から南寮漁港まで約50分です。

観光

緑島には、以下のような観光スポットがあります。

朝日温泉
観音洞
海参坪
小長城
緑島灯台
白色恐怖緑島紀念園区
緑洲山荘

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