總持寺祖院

諸嶽山 總持寺祖院：七百余年の歴史を刻む能登の禅寺

石川県輪島市門前町に位置する總持寺祖院は、曹洞宗の寺院です。山号を諸嶽山といい、能山（のうざん）または岳山（がくざん）の通称で親しまれています。かつては曹洞宗の大本山でしたが、1911年（明治44年）、横浜市鶴見区への移転に伴い、現在の名称となりました。

霊夢と禅林の創建

總持寺祖院の歴史は古く、元々は諸岳寺という密教系の寺院だったと伝えられています。創建は行基によるものとされ、真言宗であったとする説もあります。1321年（元亨元年）、当時の住持・定賢の霊夢をきっかけに、越中国永光寺の瑩山紹瑾禅師が寺を譲り受け、禅林として改め、総持寺と命名して開山となりました。
翌年には後醍醐天皇から勅問への解答に対する褒賞として寺額を賜ったとされますが、これは伝説の域を出ません。1324年（正中元年）、瑩山紹瑾禅師は寺制を整備し、その後、峨山韶碩禅師らによって整備が進められました。多くの寺院が同寺の系統をひき、永平寺との間で本山の地位や諸権利を巡る論争もあったものの、能登国の大本山として広く信仰を集めました。

戦乱と復興、そして横浜への移転

室町時代には幕府や地元の有力者からの庇護を受けましたが、1570年（元亀元年）の戦乱で焼失。その後、前田氏のもとで再興を果たし、江戸時代には加賀藩から手厚い保護を受けました。江戸幕府も永平寺と並んで大本山として認め、徳川家康から多額の寄付を受け、幕府祈願所にも指定されました。
明治時代に入ると、1898年（明治31年）の大火で再び伽藍の大部分を焼失するも、1905年（明治38年）に再建されました。しかし、この再建を機に、大本山としての更なる発展のため、よりふさわしい場所への移転を求める声が高まり、1911年（明治44年）、横浜鶴見への移転が決定しました。これにより、能登の総持寺は「總持寺祖院」と改称され、別院としての歴史を歩むことになりました。

能登半島地震と復興

2007年（平成19年）の能登半島地震では、境内の建物全てが被害を受けましたが、その後、修復工事が進められ、2021年（令和3年）には開創700年を記念した落慶法要が営まれました。しかし、2024年（令和6年）1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、再び甚大な被害を受けました。国の登録有形文化財を含む多くの建物が倒壊し、700回忌法要に向けた準備が頓挫する事態となりました。

貴重な文化財

總持寺祖院には、多くの文化財が伝来しています。経蔵は石川県指定有形文化財、山門、香積台、仏殿、法堂、山門回廊、玄風廊、慧心廊などは国の登録有形文化財に指定されています。さらに、大祖堂、仏殿、山門など16棟は国の重要文化財への指定が答申されています。

歴代住持

開山は瑩山紹瑾禅師であり、その後、峨山韶碩禅師など多くの高僧が住持を務めました。横浜への移転後も多くの住持が寺院を支えてきました。

古和秀水

總持寺祖院の門前町を流れる鬼屋川の5km上流には、古和秀水と呼ばれる名水があります。日量約90トンの湧水は、開祖瑩山紹瑾禅師の伝説にも登場し、寺や住民にとって神聖な水として尊ばれています。1985年には名水百選の一つに選ばれ、周辺は森林公園として整備され、白米千枚田と並ぶ名水スポットとして親しまれています。

總持寺祖院の現在

度重なる地震による被害にもかかわらず、總持寺祖院は、その歴史と文化を未来へと繋いでいくため、復興に向けて努力を続けています。700年以上の歴史を刻んだ寺院の未来に、人々の祈りが注がれています。

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