美江寺

美江寺（みえじ）

岐阜県岐阜市美江寺町に位置する天台宗の寺院、美江寺。大日山と号し、観昌院とも呼ばれます。一般には「美江寺観音」の名で広く知られ、地域の人々に親しまれています。本尊は十一面観音で、美濃三十三観音霊場第十八番、岐阜観音霊場第三番、東海白寿三十三観音第三十一番札所という、複数の霊場に名を連ねる由緒ある寺院です。

歴史

美江寺の起源は古く、寺伝によれば717年（養老元年）に元正天皇の勅願により、伊賀国（現在の三重県）の伊賀寺から十一面観音を移したことに始まるとされています。719年（養老3年）には、僧侶の勤操によって美濃国本巣郡十六条（現在の瑞穂市美江寺）に創建されました。創建の背景には、揖斐川や長良川の氾濫から住民を救済するという目的があったと伝えられています。

723年（養老7年）には七堂伽藍が完成し、善無畏三蔵を導師として落慶供養が行われました。寺号は、川の氾濫が収まり、美しい清流が戻ったことに由来し、美しい長江を意味すると言われています。

中世の詳しい歴史は不明な部分が多いですが、土岐氏の庇護を受け、1506年（永正3年）には土岐成頼によって伽藍が修復されました。現在の場所への移転は、1549年（天文8年）に斎藤道三が稲葉山城を築城した際に行われたとする説や、織田信長が移したとする説があります。稲葉山城の南西に位置し、裏鬼門を守護する役割も担っていたとされています。

江戸時代には、門前が遊女屋、見世物、相撲、芝居などで賑わい、多くの人々が集まる場所でした。しかし、1871年（明治4年）には政府の寺領上知令により寺領を失い、1945年（昭和20年）の岐阜空襲で伽藍を焼失するという大きな被害を受けました。その後、1952年（昭和27年）に阿弥陀堂（仮本堂）、1955年（昭和30年）に本堂、1986年（昭和61年）には仁王門が再建され、現在に至っています。

文化財

美江寺には、歴史的、文化的に貴重な文化財が数多く所蔵されています。

重要文化財

乾漆十一面観音立像: 高さ176.6cm。奈良時代に作られたと推定される脱活乾漆造の仏像です。近畿地方以外では珍しい技法で、制作年代や技法から見ても大変貴重な仏像です。

岐阜市指定文化財

木造十一面観音立像
木造菩薩坐像
猩々面
木造獅子頭: ヒノキ製で、高さ約29cm、長さ約36cm、幅約36cm。鎌倉時代の作とされています。
木造不動明王半跏像: ヒノキ製で、高さ約2,836cm。こちらも鎌倉時代の作です。

これらの文化財は、美江寺の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。

所在地

岐阜県岐阜市美江寺町2-3

行事

美江寺では、年間を通じて様々な行事が行われています。

美江寺まつり（別名: けんかまつり、蚕まつり）: 毎年3月第1日曜日に行われる祭り。山車の上から猩々面を被った男が杓子を群集に投げつけ、その底の抜け具合で吉兆を占うという独特な祭りでしたが、現在は行われていません。
節分星まつり: 毎年2月3日
本尊ご開帳: 毎年4月18日
岐阜空襲慰霊祭: 毎年7月9日
大護摩: 毎年10月
除夜の鐘: 大晦日

交通アクセス

岐阜バスの「美江寺町」バス停、または「市民会館・裁判所前」バス停が最寄りのバス停です。JR岐阜駅バスターミナルや名鉄岐阜のりばからは、「御望野」、「宝珠ハイツ」、「岩戸公園」、「旦ノ島」行きや長良線などを利用すると便利です。

その他

瑞穂市美江寺の地名は、かつて美江寺があったことに由来します。現在もこの地には美江寺観音があり、毎年3月第1日曜日にはお蚕祭りが行われ、岐阜市の美江寺の美江寺祭りと良く似た祭りが行われています。このことから、この地域と美江寺との深いつながりを知ることができます。

ギャラリー

（ギャラリーの画像については省略）

脚注

（脚注については省略）

参考文献

平凡社地方資料センター 編『岐阜県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系〉、1989年7月。
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 岐阜県』角川書店、1980年9月。
岐阜県百科事典制作委員会『岐阜県百科事典』 上、岐阜日日新聞社、1968年。
岐阜県百科事典制作委員会『岐阜県百科事典』 下、岐阜日日新聞社、1968年。

外部リンク

公式ウェブサイト
大日山 美江寺観音 - Facebook

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