義円

源義円：若くして散った源氏の武将

源義円は、平安時代末期に活躍した、数奇な運命をたどった武将です。源義朝の八男として生まれ、母は常盤御前。幼名は乙若丸といい、同母兄には阿野全成（幼名：今若丸）、同母弟には源義経（幼名：牛若丸）がいます。源頼朝とは異母兄弟という関係です。

義円は、まず園城寺で出家し、円成と名乗りました。その後、白河天皇の皇子である円恵法親王の坊官を務めていました。この「卿公」という称号は、母の再婚相手である一条大蔵卿に由来すると言われています。そのため、義円は養父の縁故によって円恵法親王に仕えていたと考えられています。のちに、父である源義朝から一字をもらって義円と改名しました。具体的な時期はわかっていません。

義円の生涯における重要な出来事が、治承5年（1181年）に起こりました。叔父にあたる源行家が尾張で挙兵すると、義円もその陣に加わったのです。墨俣川（現在の長良川）の河畔では、平重衡率いる平家軍と激突（墨俣川の戦い）。この戦いで、義円は単騎で敵陣への夜襲を敢行しようと試みましたが、残念ながら失敗に終わってしまいました。そして、平家の家臣である高橋盛綱との戦闘の末、討ち取られてしまいます。享年27歳でした。

『吾妻鏡』には、義円が頼朝のもとを訪れた記録がないため、義円は独自に尾張に入り、行家と共に挙兵したと推測されています。しかし、『源平盛衰記』には、頼朝が義円に千余騎を与え、行家の援護のために派遣したという記述があります。このことから、頼朝が平家打倒のために兵を挙げた際に、義円は頼朝の指揮下に入り、援軍として行家の元に派遣された可能性も考えられます。

義円には遺児がおり、義成と名付けられました。義成は愛智荘（現在の愛知県愛知郡）を領し、愛智氏の祖となりました。義円の墓は、岐阜県大垣市墨俣町上宿の田畑の中にあり、旧墨俣町の文化財に指定されています。墓のすぐ近くには「義円公園」があり、「墨俣川合戦の碑」「義円地蔵」「源義円供養塔」などが建立されています。現在でも、義円は地元の人々によって大切に供養されています。

義円は、短い生涯でしたが、源氏の一員として、そして僧侶として、激動の時代を生きた人物です。源義経や源頼朝といった有名武将との血縁関係、墨俣川の戦いで見せた勇猛果敢な戦いぶり、そして、その最期は、後世に語り継がれる数々の物語を生み出しました。近年では、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で取り上げられ、改めて注目を集めています。義円の生涯は、平安時代末期の動乱を理解する上で重要な手がかりを与えてくれるでしょう。彼の生き様は、現代社会においても、勇気と決断の大切さを教えてくれるのではないでしょうか。

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