聖教社

聖教社（せいきょうしゃ）

聖教社は、明治時代にイギリス海外福音伝道会（SPG）の手により、東京の芝区栄町に誕生した歴史ある学校です。聖アンデレ教会がこの地で活動を開始したのと同時期に、その敷地内にミッションスクールとして開かれました。すぐ隣には女子教育のための分校も設けられています。また、米国聖公会によって設立された立教学校（現在の立教大学）や立教女学校（現在の立教女学院）とは姉妹校にあたる関係でした。

概要と歴史

明治12年（1879年）6月4日、SPGから派遣された宣教師、アレクサンダー・クロフト・ショーとウィリアム・B・ライトが東京府芝区栄町12番地に聖アンデレ教会を設立。これに合わせて、二人の手によって教会の敷地内に「聖教社」が開設されました。学校の設立に先立つ同年1月には、多治見十郎が開業願を東京府に提出しており、多治見は後に聖教社で英学の教授を務めています。

聖教社で学ぶことができた学科は、単なる英語の習得にとどまらず、多岐にわたっていました。正規の英学、応用英学に加え、数学、漢字、習字などが教えられていました。日本聖公会の歴史書にも記されているように、設立当初から神学教育に限定されない、多様な学びの場であったことが分かります。英学の教則に含まれていた科目には、綴り方、習字、英会話、読書、文法、さらに史学、地学、理学、植物学、修心学といった広範な分野がありました。ただし、具体的にどのような教科書が使用されていたかは現在では不明です。

明治16年（1883年）の「学事年報」からは、本校が7年制の教育課程を設けていたことが確認できます。入学資格は満14歳から20歳までで、費用は束修50銭、授業料75銭、月俸250銭という内訳でした。

教員としては、応用英学を多治見十郎が担当し、正規英学ではショーが筆頭として名を連ねていました。漢学は田原秀毅（当時42歳）が教えました。

明治13年（1880年）1月には、隣接する芝区栄町13番地に女子教育のための「聖教社分校女学校」が設立されました。こちらも届出人は多治見十郎で、英学と数学の教員にはミセス・ショーが就きました。女子校では英語、漢字、数学、習字に加え、裁縫も教えられています。教育課程は予科3年、本科5年制で、満6歳から20歳までの女子を受け入れ、当時としては質の高い普通教育を提供していたとされています。授業料は上等50銭、中等30銭、下等15銭でした。

しかし、明治16年（1883年）2月、聖教社は都合により一時的に休業することとなり、これに伴い聖教社分校女学校も廃校届が出され、閉校となりました。

その後、聖教社は再び活動を開始し、明治19年（1886年）には、今井寿道が再開後の聖教社の教頭兼幹事に就任しています。設立時期は明らかではありませんが、続いて「聖安得烈学院」が設立され、香蘭女学校（現在の香蘭女学校中等科・高等科）の初代校長を務める今井寿道が、明治22年（1889年）からこの聖安得烈学院の教授も兼務しました。

明治25年（1892年）11月には、聖教社があった場所で再び聖安得烈学院が設立されたと伝えられています。この時、設立許可願が当局に提出され、認可校としての地位を得たと考えられています。学校長は吉沢直江が務め、学科は神学（3年）と英学（3年）でした。これは、設立当初の英学私塾としての側面を残すものでした。また同時期には、聖安得烈英語夜学会も存在していました。当時の日本聖公会主教エドワード・ビカステスの指示により、聖安得烈学院の授業は全て英語で行われていたため、学生の中には英語力に不安のある者もおり、夜学会はその補強を目的としていました。聖安得烈学院および夜学会では、SPGの宣教師ライオネル・チャモレーが教鞭を執っています。

明治35年（1902年）、今井寿道が香蘭女学校の校長を辞任したのを機に、聖教社神学部の校長に就任しました。翌明治36年（1903年）には聖安得烈学院が廃校となりますが、明治38年（1905年）4月、今井寿道によって専門学校令に基づく「聖教社神学校」の設立許可願が提出されます。この時初めて、英国国教会付属伝道会社の資金とエドワード・ビカステス記念奨学資金を活用し、純粋な伝道者養成のための神学校として新たなスタートを切りました。

そして、明治44年（1911年）、聖教社神学校は東京三一神学校と合併し、今日の日本聖公会の中心的な神学教育機関である「聖公会神学院」が設立されることになります。聖教社は、その歴史を通じて、明治期の聖公会における教育、特に神学教育の発展に重要な役割を果たした学校と言えるでしょう。

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