胃瘻

胃瘻（いろう）について

胃瘻は、医療現場において食物、飲料、または医薬品を直接胃に投与するための経管栄養手法の一種です。腹壁を切開し、胃にチューブを挿入するこの処置は、経口摂取が困難な患者の栄養管理に重要な役割を果たします。

胃瘻の概要

この手続きは、嚥下障害がある患者、つまり脳神経や口腔、咽頭、食道に障害を抱えるために、口からの食物や水分の摂取ができない方々に対して行われます。1980年代にアメリカで内視鏡を用いた胃瘻造設術（PEG）が開発され、以降多くの国で普及しました。胃瘻による栄養補給には、必要で十分な栄養を患者に提供することが目的であり、生命の維持やQOL（生活の質）の向上に寄与します。

また、この経管栄養法により、誤嚥性肺炎の発生率が低下する可能性がありますが、口腔ケアが必要であり、完全に防ぐことができるわけではありません。

適応外のケース

胃瘻の造設は、以下の条件のいずれかに該当する場合には実施しません：
1. 老衰や終末期癌における平穏死や尊厳死の希望がある患者。
2. 患者またはその家族が胃瘻造設を希望しない。
3. 胃や腸の機能に明らかな病気があり、人工栄養が困難な場合。
4. 妊娠中。
5. 内視鏡が使用不可能な状態。
6. 胃瘻からの継続的な出血がある場合。
7. 著しい肥満によりチューブが届かない問題。

このような諸条件を考慮に入れながら、医療従事者は患者にとって最善の選択肢を検討します。

造設と閉鎖

胃瘻の造設は、皮膚、および胃壁を貫通した瘻孔に栄養チューブを留置する手術です。栄養は外部から注入されるため、患者に必要な水分や栄養を供給できます。治療後、チューブを抜去すると自然に閉鎖されますが、誤って抜けてしまった場合には、急遽チューブを留置する必要があります。

経腸栄養剤とその種類

使用される栄養管理の方法は大きく分けて「静脈栄養」と「経腸栄養」に分類され、胃瘻患者には経腸栄養剤が使われます。経腸栄養剤は、消化吸収のタイプや形態に応じて様々です。たとえば、成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤などがあり、医薬品としての提供と食品としての提供が考慮されます。

代表的な経腸栄養剤

医薬品としては「ラコール配合経腸用液」や「エンシュア・リキッド」、食品としては「レナジーU」や「アイソカル」などが知られています。

胃瘻延命に関する議論

胃瘻による延命行為には、多くの批判の声があります。延命自体は可能かもしれませんが、生活の質（QOL）が著しく低下し、介護の負担も増すことが指摘されています。実際に、医療現場では胃瘻の使用について倫理的な観点から慎重な検討が求められています。特に、患者自身やその家族が胃瘻による治療を望まない場合には、医療の選択肢を考えることが重要です。

その他の経管栄養法の進展

近年では、胃瘻以外にも経鼻胃管やCVポートなどの手法が人気を集めており、状況に応じた栄養管理法が選ばれています。特に高齢者医療においては、患者の尊厳を保つために、適切なケアの選択が求められています。

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