胎内川

新潟県胎内市を流れる胎内川は、二級水系における本流の河川です。

概要

胎内川の源流は、新潟県胎内市下荒沢に位置する飯豊山地の藤十郎山にあります。そこから流れ出した水は北西方向へと進み、櫛形山脈を横断した後、胎内高原地域を経て、胎内市荒井浜と胎内市笹口浜の境界を縫うように流れ、やがて日本海へと注ぎます。

この河川の特徴として、中流域から下流にかけて広がる扇状地帯では、夏季の乾燥期に河川水が地下へと浸透し、地上を流れる水が枯れてしまう「水無川」となることがあります。地下に潜った水（伏流水）は、扇状地の末端部の様々な場所で再び地上に湧き出す現象が見られます。

胎内川の流路は、歴史的に変化してきました。元々は、日本海岸近くで流路を北寄りに変え、北上して荒川の河口付近で合流していました。荒川との合流点から胎内川を分離させる構想は享保年間には既に存在しましたが、明治21年（1888年）に現在の胎内川の流路となる放水路が完成したことで、胎内川は直接日本海へ注ぐ形となりました。かつての荒川合流への流路の名残は、現在の乙大日川として残されています。

歴史

流域は過去に大きな水害に見舞われた記録があります。特に、昭和41年（1966年）の7.17水害と、その翌年の昭和42年（1967年）に発生した8.28水害（羽越水害）では、流域で甚大な被害が発生しました。後者の羽越水害では、当時の自治体である中条町と黒川村（いずれも現在の胎内市域）において、合わせて39名の死者が出るなど、深刻な被害をもたらしました。

名称と由来

「胎内川」という名称は古くから様々な形で文献に記録されています。例えば、

仁治元年（1241年）の古文書「つふらの尼譲状」には「堂以乃可八」「たいのかハ」
弘長4年（1264年）の「高井道円時茂譲状」には「堂以乃可八」
建治3年（1277年）の「三郎宛の十一月譲状」には「多以乃可八」、「四郎宛の十一月譲状」には「多以乃加八」
鎌倉時代後期の「波月条絵図」には「太伊乃河」
明応9年（1500年）の「平子斉藤連署書状」には「多以奈川」
慶長2年（1597年）の「越後国郡絵図」には「たゐな川」
宝暦6年（1756年）の「越後名寄」写本には「タイナ川」「イイナ川」
天明6年（1786年）の橘南谿による「東遊記」には「鯛名川」
享和2年（1802年）の三輪長泰による「越後国全図」には「胎内川」「大名川」
文化3年（1806年）の井上秀栄による「越後巡見記」には「胎内川」
文化12年（1815年）の小田島允武による「越後野志」には「胎内川」（明治政府写本には「タイナヒ」と訓）
文化13年（1816年）の草間文績による「越後興地全図」には「胎内川」「躰無川」（タイナカワ）
文政3年（1820年）の神保泰和による「北越略風土記」には「たい奈川」
明治35年（1902年）の吉田東伍による「大日本地名辞書」には「胎内川」（タイナカワ）
明治45年（1912年）の国土地理院旧版地図「5万分1図中条」には「胎内川」（タイナカワ）

など、時代の変遷と共に様々な表記が見られます。

名称の由来については諸説が存在します。一つには、川の上流部にある朳差岳に見られる雪形「鯛頭（たいがしら）」にちなんでいるという説があります。また、扇状地で伏流水となった水が河口付近で再び湧き出す様子が「胎内」から生まれる様子を連想させることから名付けられた、あるいは、夏に水が枯れて地下水となる様子が「胎内」に似ていることに由来するという説も唱えられています。

かつては、アイヌ語の「テイ・ナイ」（清い川）や「タイ・ナイ」（森の中を流れる清い川）、または「トイ・ナイ」（泥の川）を語源とするという説も広く信じられていました。胎内市が合併によって誕生する際には、市の広報誌にも「『胎内』はアイヌ語で『清い水の流れ』を意味する」と掲載されたことがあったほどです。しかし、近年ではこれらのアイヌ語語源説は誤った言い伝えであるとする見解が有力視されています。地名研究家の藤井尚治も、初期にはアイヌ語説を唱えましたが、後に日本の古代語であるとの見解に変遷させています。

漁業

胎内川では漁業活動も行われており、胎内川漁業組合がサケの栽培漁業に取り組んでいます。下赤谷養殖場ではサケの採卵と孵化が行われ、育てられた稚魚が胎内川に放流されています。2009年には1098尾のサケが漁獲されており、その内訳はメスが536尾、オスが562尾でした。

流域

胎内川が流れる自治体は、新潟県胎内市のみです。

主な施設

胎内川の流域にはいくつかの河川施設が建設されています。主なものとして、

胎内第二ダム（発電用ダム）
胎内川ダム（治水ダム）
胎内第一ダム（発電用ダム）
* 奥胎内ダム（多目的ダム）

などが挙げられます。

流域の観光地

流域は自然豊かな観光地としても知られています。主な観光地には、美しい景観が広がる胎内高原、冬季に利用できる胎内スキー場、そして新胎内温泉などがあります。

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