胡景伊

胡景伊（こ けいい）

胡景伊（1878年 - 1950年）は、清末から中華民国にかけての軍人であり、川軍（四川軍）の指導者の一人として知られています。字は文瀾。

生涯

清末の活動

胡景伊は、製塩業を営む家庭に生まれました。1901年、官費留学生として日本に留学し、成城学校、陸軍士官学校（歩兵科）で軍事を学びました。同期には蔡鍔や蒋方震らがいます。留学中には、藍天蔚らとともに拒俄学生軍を組織し、軍国民教育会にも参加しました。

1904年に帰国すると、四川総督の錫良から四川陸軍武備学堂管堂委員兼教習に任命され、軍官の育成に携わりました。1907年に錫良が雲貴総督に異動すると、胡もこれに従い、督練処参議官や雲南陸軍小学・雲南陸軍講武堂総弁などの役職を歴任しました。1909年には、広西巡撫の沈炳堃に招聘され、広西省の新軍協統に任命されました。

四川の実権掌握

1911年、武昌起義が勃発すると、広西省の革命派が蜂起し、胡景伊は広西都督に推挙されました。しかし、胡には反清の意思がなかったため上海に逃亡し、その後四川省に戻りました。1912年2月、四川省南部で北進してきた滇軍と川軍の間で紛争が発生すると、胡景伊が調停に入り、衝突を回避しました。その後、四川都督の尹昌衡に招聘されて成都入りし、全川陸軍軍団長に任命されました。同年7月、尹がチベット軍討伐に向かうと、胡は北京の袁世凱から護理（代理）四川都督に任命されました。

この頃から、胡景伊は尹昌衡を追い落とし、袁世凱の権威を借りて四川の実権を握ろうと画策しました。1913年6月、袁世凱は胡を四川都督に正式に任命し、尹を川辺経略使に異動させました。この人事に怒った尹は辞職し、その後胡によって逮捕され、失脚しました。同年の二次革命では、胡は袁世凱を支持し、熊克武ら革命派を鎮圧しました。1914年6月、胡は威武将軍に任命され、四川軍務を督理しました。

失脚とその後

しかし、胡景伊は親袁世凱派ではあったものの、北洋軍閥の出身ではなかったため、袁世凱から全面的な信頼を得ることはできませんでした。1915年2月、北洋軍閥の陳宧が四川督軍に任命されると、胡は北京に召還され、名目だけの毅武将軍兼参政院参政に異動させられました。

その後、胡景伊は何度か四川省での復権を試みましたが、いずれも失敗に終わりました。晩年は重慶に寓居し、国民参政会参政員などを務めましたが、軍政から引退したと見なされています。1950年、重慶で死去しました。享年73歳。

参考文献

呉嘉陵「胡景伊」中国社会科学院近代史研究所『民国人物伝 第11巻』中華書局、2002年。ISBN 7-101-02394-0。
徐友春主編『民国人物大辞典 増訂版』河北人民出版社、2007年。ISBN 978-7-202-03014-1。
* 劉寿林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年。ISBN 7-101-01320-1。

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