熊克武

熊克武：革命家から軍閥へ、激動の生涯

熊克武（ゆう こくぶ、1885年 - 1970年）は、清末、中華民国、中華人民共和国の時代を生きた軍人であり、川軍（四川軍）の指導者として知られています。字は錦帆。湖南省麻陽県出身。

革命への目覚めと初期の活動

元々は医者の家庭に生まれ、学問を志していましたが、1903年に四川東文学堂に入学したことが転機となります。ここで、後に民国時代に活躍する戴季陶らと出会い、影響を受けました。

同年冬には日本へ留学し、東斌学堂で軍事を学びます。留学中には孫文と出会い、その思想に共鳴。1905年には中国同盟会の結成に参画し、革命運動に身を投じることになりました。帰国後は、黄興ら同志と連携し、各地で反清蜂起を計画しました。

辛亥革命後の1912年、重慶で成立した蜀軍政府で軍総司令に就任。その後、四川軍政府との合流を経て、四川陸軍第5師師長として重慶に駐屯しました。

二次革命と護国戦争

1913年の二次革命では、袁世凱打倒を目指して蜂起しますが、胡景伊に敗れて日本へ亡命。その後、東南アジアで革命資金の調達に奔走しました。1915年には帰国し、護国戦争に参加。蔡鍔率いる護国軍に従い、四川に戻りました。袁世凱の死後、蔡鍔が四川督軍となると、熊克武は川軍第5師師長兼重慶鎮守使に任命されました。

四川統治を巡る争い

1917年、孫文が護法運動を開始すると、熊克武もこれを支持し、四川靖国軍総司令に就任。北京政府側の劉存厚との戦いを繰り広げ、1918年には成都を攻略して劉を駆逐しました。

しかし、四川の統治権を掌握した熊克武は、次第に他の川軍の同僚を抑圧し、権力拡大に走るようになります。1920年には、呂超らの反発を招き、雲南軍の支援を受けた呂超との間で激しい戦闘が繰り広げられました。最終的に劉存厚との和解により、呂超と雲南軍を四川から駆逐することに成功しました。

同年12月、熊克武、劉存厚らは「四川自治」を宣言し、北京政府にも南京政府にも与しない姿勢を示しました。しかし、川軍内部での対立は収まらず、北京政府と通じた劉存厚を再び四川から追放します。1921年には湖北省の呉佩孚を攻撃しましたが、敗北を喫しました。

国民党への参加と失脚

1924年、熊克武は中国国民党第1回代表大会で中央執行委員に選出され、国民党への参加を表明します。しかし、北京政府の支援を受けた川軍との戦いに敗れ、四川省から逃れて湖南省常徳に身を寄せました。

1925年、広東へ向かい広州に到着しますが、汪兆銘と蔣介石によって、陳炯明と結んで広東軍政府の転覆を企てたという罪で逮捕され、軍を没収されました。これにより、熊克武は事実上、軍事・政治の舞台から退場することとなりました。

晩年

1927年に釈放された後、国民政府委員に任命されましたが、四川省の名士として社会活動に多く従事しました。中華人民共和国建国後も大陸に留まり、西南軍政委員会副主席、全国政治協商会議委員、全国人民代表大会常務委員、中国国民党革命委員会（民革）中央副主席などを務めました。

1970年9月2日、北京で病没。86歳でした。

熊克武は、革命家として出発し、軍閥として権力を掌握しましたが、最終的には政治の舞台から退くこととなりました。その生涯は、激動の中国近代史を象徴するものと言えるでしょう。

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