能勢妙見山 (日蓮宗)

能勢妙見山：歴史と信仰の聖地

能勢妙見山は、大阪府豊能郡能勢町に位置する日蓮宗の寺院です。無漏山を山号とし、本尊は妙見菩薩。古くから北極星信仰の聖地として崇められ、関西地方のみならず全国的に知られています。正式名称は無漏山眞如寺境外仏堂能勢妙見山で、能勢町地黄にある真如寺の境外仏堂にあたります。しかし、本寺よりも多くの参拝者を集め、関西地方の日蓮宗寺院において重要な役割を担っています。

歴史：行基から能勢氏まで

能勢妙見山の歴史は、天平勝宝年間（749年～757年）に行基が為楽山（現在の妙見山）山頂に為楽山大空寺を建立したことに始まると伝えられています。平安時代の寛和2年（986年）、源満仲が屋敷で祀っていた妙見菩薩像を当地に遷座。その後、満仲の孫である源頼国が能勢に移住し、能勢氏を称してこの地の領主となると、能勢氏は妙見菩薩を篤く信仰しました。

天正9年（1581年）、明智光秀の攻撃を受けた能勢頼次は、丸山城から能勢妙見山に拠点を移し、為楽山城（大空寺城）を築いて抵抗しましたが、降伏。本能寺の変後、羽柴秀吉の攻撃を受け丸山城が落城すると、頼次は備前国に逃亡し、領地を失いました。しかし、関ヶ原の戦いで徳川家康の家臣として活躍した功績により、能勢の領地を回復。江戸幕府の旗本として能勢氏を再興させました。

頼次は日蓮宗の日乾（身延山久遠寺21世）に帰依し、日乾を開山として真如寺を開基。慶長10年（1605年）、行基ゆかりの大空寺跡、かつての自城跡に本殿（開運殿）を建立し、新たな妙見菩薩像を安置しました。これが現在の能勢妙見山の始まりです。以来、能勢氏の庇護の下、多くの参拝者を集め、「能勢の妙見さん」として広く知られるようになりました。

明和5年（1768年）、女人禁制が解かれ、安永2年（1773年）には本殿の内拝が許されるなど、さらに賑わいを見せました。安永3年（1774年）、能勢頼直は江戸に別院を建立。火伏せの札「能勢の黒札」は江戸で広く信仰を集めました。この別院には坂本龍馬や勝海舟も訪れたと伝えられています。天明7年（1787年）には、焼失した本殿が再建されました。

境内：歴史的建造物と現代施設

能勢妙見山の境内には、天明7年に再建された本殿（開運殿）をはじめ、祖師堂（棲神殿）、浄水堂、経堂、絵馬堂、庫裡、祥雲閣、鐘楼、日蓮聖人像、日乾上人像、能勢頼次像などが現存しています。山門は大阪府と兵庫県の県境に位置しています。1998年には、能勢氏の家紋を模した信徒会館「星嶺」が建てられ、ガラス張りの礼拝堂が特徴的です。かつては売店と簡易郵便局も併設されていましたが、現在は毎月15日の月例法要や星嶺祭などの特別な行事の時のみ一般公開されています。

アクセス：徒歩または自家用車

能勢妙見山へのアクセスは、現在は徒歩または自家用車のみです。古くから能勢街道や能勢電鉄が参詣路として利用されていましたが、2023年12月以降、公共交通機関による直通アクセスはなくなりました。山頂までは多くの登山道があり、本瀧寺からのルートが比較的容易とされています。初日の出や初詣など、多客時は道路規制が行われることもあります。寺院では、祈祷などの参拝者や奉賛会会員を対象に、池田、亀岡、能勢電鉄妙見口駅からの送迎サービスを提供しています。かつては阪急バスや京都交通のバス路線が運行されていましたが、現在は廃止されています。また、妙見の森ケーブルとリフトも2023年12月3日に廃止されました。

文化財：妙見山のブナ林

能勢妙見山周辺のブナ林は、大阪府・川西市指定の天然記念物に指定されています。

能勢妙見山は、歴史と信仰が深く結びついた、貴重な霊場です。静寂に包まれた山上に佇む寺院とその周辺の自然は、訪れる人々に深い感動を与えてくれます。

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