臥蛇島

臥蛇島（がじゃじま）

臥蛇島は、鹿児島県の吐噶喇（トカラ）列島に属する無人島です。トカラ列島最大の島である中之島の西約28kmに位置します。1970年（昭和45年）に全島民が集団移住し、無人島となりました。

地理

島の名前は、沖から眺めると蛇が伏せたような形をしていることに由来すると言われています。『海東諸国記』には「掛蛇島」、清の冊封正使汪楫の『使琉球雑録』には「臥蛇島」と記されています。

島の大きさは、長径約3km、短径約2km。最高地点は御岳（みたけ）の497mです。周囲は約9kmで、島のほとんどが高さ50mから100mの断崖絶壁となっています。楠久浜（くすくのはま）にごくわずかな砂浜があるのみで、平坦な土地はほとんどなく、北西部に緩やかな斜面がある程度です。

島の南東方向には小臥蛇島が、すぐ西沖には高さ110mの無人島である木場立神（こばたてがみ）があります。

地質的には、新第三紀鮮新世の古い火山活動によってできたと考えられていますが、無人化以降は詳細な地質調査が行われていないため、詳しいことは分かっていません。島の主な構成物質は安山岩です。

山

御岳
矢筈岳
五神岳
金居岳

集落

かつて島民は、島の北部の比較的緩やかな前之浜（まえのはま）近くの台地上に住んでいました。集落はかつて上、中、下の三つに分かれていましたが、海岸からの標高が50m以上あり、海岸から集落までは急な階段を200段ほど登らなければなりませんでした。現在、木造の住宅や学校などの建物はほとんど朽ち果て、リュウキュウチクの群生地となっています。残っているのは、島の守り神を祀った小さな鳥居と無人の灯台のみです。住宅の一部や石垣なども残っていますが、長年の風雨にさらされて損傷が激しいです。

集落から南には八幡宮、南西には畑作地帯や放牧地帯があり、これらはすべて島の北部に集中しています。

気候

年平均気温：18.1℃
年間降水量：2,619.7mm

生物

植生は主にリュウキュウチク群落、タブノキ・スダジイ群落、ビロウ群落から構成されています。

歴史

かつては100人以上の人々が暮らし、戦前はカツオ漁などで他の島よりも繁栄していました。しかし、地形が急峻で大規模な港を建設できなかったことなどから、徐々に衰退していきました。アメリカ軍の統治下に入った戦後の一時期には活況を呈しましたが、それも長くは続きませんでした。

島内での自給自足の自然経済から貨幣経済への移行、本土復帰後の昭和30年代から昭和40年代にかけての集団就職による人口減少、週に1度の定期航路が荒天で欠航し、しばしば飢饉が発生するなど、島での生活を維持することが困難になったため、1970年7月28日、全島民が鹿児島市などへの集団移住を選択しました。当時の人口は7世帯28人（1970年1月調査時点）まで減少しており、最後の日は4世帯16人でした。

移住後、略奪や台風被害などにより、無人島となってからわずか数年後にはほとんどの住居が荒れ果ててしまいました。島民の集団移住後も、灯台職員が1982年4月まで交代制で勤務していました。

島の周囲は好漁場であり、ダイビングスポットにもなっているため、多くの船が立ち寄ります。上陸は公式には認められていません。現在、船着き場から集落跡までの道は荒れており、非常に危険な状態です。

集団移住までの経緯

1945年9月：枕崎台風により甚大な被害を受ける（離島者が増加）。
1951年10月：ルース台風により甚大な被害を受ける（離島者がさらに増加）。
1970年7月28日：全島民が移住。

教育

十島村立中之島小中学校臥蛇島分校がありましたが、廃校時の教職員数は2名、児童生徒数は7名でした。児童生徒数が少なかったため、複数の学年が同じ教室で授業を受ける複式学級でした。校舎はヒノキ造りで、当時は村内で最も立派な建物だったと言われています。

経済

漁業と農業が中心でした。農業では、畜産が盛んに行われ、現金収入源となっていました。畑ではサツマイモ、麦、米、アワ、ジャガイモ、タマネギ、ダイコンなどが栽培されていました。

臥蛇島灯台

1940年に運用が開始されました。1944年にアメリカ軍の爆撃で一時破壊されましたが、1955年に再稼働しました。職員、施設ともに島民の生活に深く関わっていました。1982年に自動化され、無人となりました。

民俗・文化

島には独自の行事や宗教がありました。八幡神社は島の総鎮守であり、集会や儀式も行われていました。島民が島を去る際には、神々を合祀した石碑が建てられました。

臥蛇島関連の番組

ある人生「臥蛇の入道先生」(NHK)
* 全島移住の島、臥蛇(MBC南日本放送)

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