自動車泥棒 (映画)

自動車泥棒（1964年）

1964年に東宝が製作・配給し公開された日本の長編劇映画です。本作は、のちに多くの作品を手がけることになる和田嘉訓の記念すべき監督昇進第1作にあたります。また、俳優の安岡力也、真理アンヌ（当時の芸名はデビイ・シエス）にとって、映画俳優としてのキャリアをスタートさせたデビュー作としても特筆されます。

作品概要

東宝で助監督として研鑽を積んでいた和田嘉訓が、自身の熱意と構想を込めて執筆したオリジナル脚本を基に映画化されました。物語の核となるのは、複雑な境遇にある混血の孤児たちです。彼らの日常、葛藤、そして未来への希望や不安が、青春群像劇として描かれています。

キャストと俳優たち

本作の最大の特徴の一つは、主要な役柄に、演技経験がほとんどない、あるいは全くない若い才能を積極的に起用した点です。主人公「酋長」を演じたのは、これが映画デビューとなった安岡力也。ヒロイン的な存在の「ハツコ」役には、後の真理アンヌであるデビイ・シエスが抜擢されました。その他にも、「アントニオ」役にロカビリー歌手のフランツ・フリーデル、「ゼニガメ」役に上岡肇（現在のケン・サンダース）、「ゴロツキ」役に勝見守利（現在のMr.モーリー）、「コムギ」役に森田則之（後のパット・モリタ）、そして「東北弁」役に城アキラ（後のジョー山中）など、現在も知られる多くの俳優やタレントが、本作で銀幕デビューを飾っています。

公開と評価

映画『自動車泥棒』は、1964年10月4日に全国で封切られました。この公開は、堀川弘通、ウーゴ・グレゴレッティ、クロード・シャブロル、ロマン・ポランスキーといった国内外の著名な監督によるオムニバス映画『世界詐欺物語』との同時上映という形で実現しました。本作で監督としての第一歩を踏み出した和田嘉訓は、当時の映画界における新人監督の状況や日本映画の未来について論じられた『キネマ旬報』誌上の座談会にも出席するなど、注目を集めました。

同名小説との関係

本作のタイトルは、アメリカのノーベル文学賞作家ウィリアム・フォークナーが1962年に発表し、翌1963年に日本語訳が出版された長編小説『自動車泥棒』（原題：The Reivers）と同名です。しかし、映画はフォークナーの小説を原作としているわけではなく、偶然タイトルが一致したのみであり、内容に関連性はありません。

その後の展開

和田嘉訓監督は、本作で描かれた世界観やテーマをさらに掘り下げるかのように、1972年に『脱出』という劇場用映画を監督しました。ピート・マック・ジュニア（現在の藤原喜久男）やフラワー・メグらが出演したこの作品は、『自動車泥棒』の続編的な位置づけと見なされることもありますが、残念ながら東宝による劇場公開は見送られました。

作品データ

製作: 東宝
上映時間: 98分
フォーマット: 白黒映画、東宝スコープ（2.35:1）、モノラル録音
映倫番号: 13598（新映倫、一般映画指定）
日本公開日: 1964年10月4日
配給: 東宝

主なスタッフ

監督・脚本: 和田嘉訓
製作: 森田信、馬場和夫
撮影: 福沢康道
照明: 平野清久
美術: 北猛夫
録音: 斎藤昭
整音: 下永尚
編集: 池田美千子
音楽: 武満徹

主なキャスト

酋長（混血児ブラック17歳）- 安岡力也
ハツコ（混血児ブラウン16歳）- デビイ・シエス
朝雄（大学生22歳）- 寺田農
アントニオ（混血児ホワイト17歳）- フランツ・フリーデル
ゼニガメ（混血児ブラック17歳）- 上岡肇
ゴロツキ（混血児ホワイト14歳）- 勝見守利
コムギ（混血児ホワイト11歳）- 森田則之
東北弁（混血児ブラック17歳）- 城アキラ
岩波（日本人尼僧50歳）- 細川ちか子
* ラーメン爺（80歳）- 上田吉二郎

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