自宮

自宮（じきゅう）についての概論

自宮とは、自らの意志で去勢手術を受ける行為を指します。この言葉は、特にかつて中国で広く行われていた宦官制度に関連して使われることが多いです。宦官制度では、去勢した男性が皇宮に仕えることが求められ、自宮はその一手段として歴史上重要な役割を果たしてきました。

歴史的背景

自宮の起源は中国に遡り、春秋時代に活躍した宦官の一人、豎刁に見られます。彼は斉の桓公の後宮を管理するため、自己去勢を希望しました。その後、隋の時代には宮刑を受けた罪人が宦官として扱われる主流となり、宦官の地位が重視されるようになると、就職のために自宮を志願する者が増えました。唐代に入ると、宮刑が一時廃止され、自宮者が大増加しました。

南漢国の時代には、科挙で優秀な成績を収めた者は、まず自宮を行い、その後に官職に任じられることが一般化していました。958年から971年にかけて在位した最後の皇帝劉鋹の時代には、総人口100万人中、約2万人が自宮した宦官でした。明代では宮刑が復活したものの、宦官の主な供給源は依然として自宮が占め、宦官の数はおよそ10万人にまで達しました。

特に1612年には、明政府が宦官の補欠を募集した際、自宮志願者が2万人に達し、社会問題としても取り上げられました。清代になると宮刑が再び廃止され、宦官は主に自宮により成り立っていました。しかし、この手術は単に本人の意思だけでなく、一部の少年は親の命令によって去勢手術を受けることが多かったと言われています。

自宮手術の方法

清代末期、去勢手術は低級官吏によって行われ、特に「小廠」という政府公認の手術小屋が設けられました。ここで行われた手術は、19世紀に研究者のG.Carter.Stentが詳細に記録しています。彼の著作によると、志願者は裸にされ、手術が行われる際は助手によって身体を押さえつけられ、刀子匠が特製の刃物で男性器を麻酔なしで切り落としていました。

術後は出血をコントロールするために熱した灰が用いられ、尿道を金属の栓で塞ぐことで封じる処置がされました。この傷は縫合はされず、紙で包まれるだけでした。水を飲むことは禁止され、完全に起き上がるまでには約2か月が必要とされていました。

中国の自宮は、男性器の全てを切り落とす完全な去勢が行われたことが特徴です。他国では多くの場合、睾丸の摘出のみが行われていますが、中国のように完全に男性器を切除する方法は珍しいと言えます。

自宮者のその後

去勢手術を施した刀子匠は、切断された男性器を保存し、これを去勢の証明として宦官志願者に渡しました。この切断部分は「宝」と呼ばれ、宦官が死去した際には棺に納められる慣習がありました。また、宦官は排尿を生涯しゃがんで行わなければならず、この習慣についての詳細な記録も残されています。

辛亥革命によって中華民国が成立し、宦官制度が廃止されるまで、彼らの生活はこのような去勢の影響を受け続けました。自宮制度は、単なる身体的な改造に留まらず、社会全体に深い影響を及ぼしていたと言えるでしょう。

参考文献

• - 三田村泰助著『宦官――側近政治の構造』中央公論新社
• - 顧 蓉，葛 金芳著，尾鷲 卓彦訳『宦官―中国四千年を操った異形の集団』徳間書店
• - 寺尾 善雄著『宦官物語―男を失った男たち』 東方書店
• - 賣英華著、林芳訳『最後の宦官　ラストエンペラー溥儀に仕えて』 NHK出版
• - 凌海成著、斌華、衛東訳『最後の宦官』 河出書房新社

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