興亜会

興亜会（こうあかい）とは

興亜会は、1880年（明治13年）に設立された日本最初のアジア主義団体です。その源流は、大久保利通が提唱した「東洋の団結」構想にあります。

設立の背景

1874年（明治7年）の台湾出兵後、大久保利通は李鴻章との間で、東洋諸国が相互に語学を学び合うことを約束しました。この構想に基づき、曽根俊虎が「振亜社」を設立し、中国語教育を開始。その後、ロシアのアジア進出や琉球処分を巡る日中対立など、東アジア情勢は緊迫化します。こうした状況下、渡辺洪基らを中心に、欧米に対抗するためのアジア振興を目指し、興亜会が発足しました。

活動内容

興亜会は、アジアの興隆と欧米への対抗を目標に掲げ、以下のような活動を行いました。

興亜会支那語学校の開設: 中国語教育を通じて人材育成を図りました。
広報誌『亜細亜会報告』の発行: 会の活動や思想を広報しました。
海外情報通信員の育成: 海外情報の収集と発信に努めました。
朝鮮使節団や親睦会の開催: 朝鮮との関係強化を図りました。
漢詩の献酬: 文化交流を通じて親睦を深めました。

設立当初、会員は77人でしたが、短期間で155人に増加。大阪、神戸、福岡に支部が設けられ、将来的には朝鮮、中国への支部設置も計画されていました。

朝鮮独立運動への関与

興亜会は、朝鮮の開化派とも連携を深めました。福澤諭吉の元に亡命した兪吉濬、金玉均、朴泳孝、徐載弼らが会に参加。1881年（明治14年）には慶應義塾に亡命したこれらのリーダーたちと連携し、『漢城旬報』の発行を支援。中村正直も支援に尽力しました。しかし、1882年（明治15年）の壬午事変により、彼らは帰国を余儀なくされ、興亜会は朝鮮へ工作員を送り込む計画も持ちましたが、実現には至りませんでした。

1884年（明治17年）の甲申政変の失敗後、福澤諭吉は『時事新報』に「脱亜論」を掲載。この頃から、興亜会の当初の理念は変質し、対外強硬論が台頭。日本のアジア主義は、清国との提携を目指すものから、対立を煽るものへと変化しました。

甲申政変と対清開戦論

甲申政変を機に、国内では対清開戦論が拡大。しかし、亜細亜協会（興亜会の後身）の議員選挙では、末広鉄腸のような非戦論者が当選しており、当時は協会内で対清開戦に反対する意見も存在していました。

振亜社と初期の活動

興亜会の前身である振亜社は、曽根俊虎が中心となって設立した中国語学校であり、大陸での情報収集活動も行っていました。曽根は帰国後、天皇に謁見し、中国に関する情報を献上しています。また、北沢正誠ら大陸浪人の支援や、高崎藩主の大河内輝声らも活動を支えました。福沢諭吉とその門下生は、壬午事変や甲申政変に関与し、曽根は福州事件にも関与しましたが、政府からは敵対視され拘禁されました。

興亜会設立当初は、渡辺洪基が中心となって組織した万年会や東京地学協会との連携もあり、会員は400人にまで増加しました。会員には、中上川彦次郎、由利公正、津田仙などの非藩閥の政府役人や旧幕臣、清国からは何如璋、黎庶昌、王暢斎などが名を連ねました。

中期から後期へ

1882年（明治15年）の壬午事変後、『興亜会報告』は、対立を将来の提携強化の教訓としようと説き、日清間の通商貿易の振興に活路を見出そうとしました。しかし、1884年（明治17年）の甲申政変により、国内では対清開戦論が高まり、亜細亜協会は開戦反対の立場を取りましたが、会員の活動は停滞。1900年（明治33年）には、亜細亜協会は東亜同文会に吸収されました。

東亜同文会は「支那保全」を掲げましたが、日清戦争後の団体であり、興亜会とは質的に異なるアジア主義団体でした。吾妻兵治は、日中朝三国の対等提携を志向し、善隣講書館を設立し、文化交流を計画しました。

組織

歴代会長:

長岡護美（第一代、第五代）
伊達宗城（第二代）
副島種臣（第三代）
榎本武揚（第四代）

主な幹事:

曽根俊虎
金子弥兵衛
草間時福
宮崎駿児
佐藤暢
末広鉄腸

主な顧問:

福澤諭吉
勝海舟
李経芳
宮島誠一郎
石川鴻斎
* 大河内輝声

まとめ

興亜会は、日本最初のアジア主義団体として、当初はアジアの連帯を目指しましたが、時代とともにその理念は変質しました。設立から解散まで、様々な人物や出来事が絡み合い、その歴史は複雑です。興亜会の活動は、その後の日本のアジア政策に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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