草間時福

草間時福（くさま ときよし）：明治の先覚者、教育者、そして民権運動家

草間時福は、嘉永6年（1853年）に生まれ、昭和7年（1932年）に没した明治時代の人物です。彼は、官僚、教育者、自由民権運動家、そして政治家として多岐にわたる分野で活躍しました。特に、旧制松山中学（現・愛媛県立松山東高等学校）の初代校長を務めたことで知られ、夏目漱石や正岡子規といった後世に名を残す人物に大きな影響を与えました。

生い立ちと教育

草間時福は、京都の士族・下田好文の子として生まれ、後に草間列五郎の養子となりました。彼は、安井息軒や中村敬宇といった著名な学者に師事し、学問の基礎を築きました。明治7年（1874年）には慶應義塾に入塾し、新井豪、竹田等、鹿島秀麿らと学びました。慶應義塾では、福澤諭吉の教えを受け、西洋の思想や学問を深く理解しました。

教育者としての出発

明治8年（1875年）に慶應義塾を卒業後、愛媛県権令岩村高俊の求めに応じ、末広重恭の推薦により、藩校明教館校舎内に新設された愛媛県英学所の初代校長兼教頭として松山に赴任しました。彼は、ギゾーのヨーロッパ文明史などを講じ、村井保固、拓殖武憲らを指導しました。草間の教育は、生徒たちの視野を広げ、自由な精神を育むことに貢献しました。

自由民権運動への参加

明治9年（1876年）には、『朝野新聞』に明治政府を批判する論文を発表し、政府の圧迫政策を非難しました。この事件により謹慎処分を受けましたが、その後も自由民権運動への情熱を失うことはありませんでした。刑期満了後、政談演説を再開し、生徒にもこれを推奨しました。明治10年（1877年）には上京し三田演説会に参加し、福澤諭吉を訪ねました。松山に戻ると、自由民権運動組織「公共社」を組織し、土佐の立志社、阿波の自助社と共に愛国社へ参加、植木枝盛や正岡子規と知遇を得ました。草間の行動は、地方における民権運動の推進力となりました。

交詢社の設立とジャーナリズム

明治12年（1879年）に松山中学校長を辞職後、上京し、同年9月には交詢社の設立に携わりました。明治13年（1880年）には『朝野新聞』に入社し、『嚶鳴雑誌』『北越新聞』などの論説も担当しました。沼間守一らと国会期成同盟に参加し、自由党創立時の中核を担うことになりました。草間の文章は、社会の不正を鋭く批判し、民衆の権利を擁護するものでした。

政党活動とアジア主義

明治14年（1881年）に東京横浜毎日新聞社に入社し、明治15年（1882年）には東京府会議員に当選しました。『大阪新報』を買収し『日本立憲政党新聞』を発行し、立憲政党を組織しました。またこの間、同じ朝野新聞の末広鉄腸・高橋基一とともに日本初のアジア主義団体「興亜会」に参加し、機関誌編集などの実務を担当しました。しかしその後立憲政党は解体し、草間は星亨や大井憲太郎と交友しました。草間の政治活動は、日本の民主主義の発展に貢献するものでした。

官僚としての晩年

明治17年（1884年）には自由民権運動から身を引き、官界に転進しました。工部省准奏任御用掛、逓信省郵便為替貯金管理所長、東京郵便電信学校長、航路標識管理所長などを歴任し、明治政府の官僚として29年間を過ごしました。大正2年（1913年）に退官し、大正3年（1914年）には錦鶏間祗候に任じられました。昭和7年（1932年）に没し、東京青山墓地に埋葬されました。

草間時福は、激動の時代を生き抜き、教育、民権運動、ジャーナリズム、そして官僚として、日本の近代化に大きく貢献した人物です。彼の生涯は、日本の近代史を語る上で欠かすことのできない重要な一部です。

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