興良親王

興良親王とは

興良親王（おきよししんのう/おきなが、1326年？ - 没年不詳）は、南北朝時代の南朝の皇族です。後醍醐天皇の孫で、護良親王の王子として生まれました。母は権大納言北畠師重の娘（北畠親房の妹）です。南朝から征夷大将軍に任じられ、大塔若宮、兵部卿若宮、宮将軍、赤松宮などとも呼ばれました。名前は「陸良」とも記されます。

なお、名前の読み方が二種類あるのは、後醍醐天皇の皇子名の読み方に関する事情が関係しています。

波乱の生涯

1336年、建武政権が崩壊すると、興良親王は後醍醐天皇に従い、山門の指揮官として活動しました。その後、各地を転戦し、和泉や紀伊で兵力を求めました。後醍醐天皇の猶子となり親王宣下を受けた後、後村上天皇が践祚すると、征夷大将軍に任じられました。

当時、東国では常陸合戦が繰り広げられており、その武士団を結集するため、1341年に常陸国へ下向しました。しかし、小田城主が武家方に降伏したため、春日顕時に奉じられ大宝城に移り籠城を余儀なくされます。その後、小山城へ移動しますが、1343年には本拠地であった関城と大宝城が陥落し、西へ逃れました。

一時、駿河に身を寄せた後、吉野に戻ります。1348年には、四條畷の戦いの敗戦後、諸将を招集して善後策を講じようとしますが、うまくいきませんでした。1351年には、南朝に帰順した赤松則祐に擁立され、播磨周辺で南朝勢力の中核として活躍しました。しかし、翌年、赤松則祐が裏切ったため、京都に送られ幽閉されます。その後、本庄氏や波多野氏ら南朝勢力に救出され、但馬・丹波を制圧しました。

その後、山陽道に進出し、摂津で赤松則祐と戦いますが、敗れて河内に落ち延びました。1360年、赤松氏範と共に足利義詮に通じ、南朝の賀名生行宮を攻撃、御所宿舎を焼き払いました。しかし、南朝軍の反撃により兵は離散し、興良親王は氏範とともに南都へ逃れたとされていますが、その後の消息は不明です。

興良親王の墓

興良親王の墓と伝えられる場所は複数存在します。兵庫県姫路市にある親王塚や、奈良県野迫川村にある田村塚（将軍塚）などが知られています。

俗説について

近世の俗書である『桜雲記』や『信濃宮伝』では、興良親王は宗良親王の王子として扱われています。また、生母を狩野貞長の娘・京極局とし、護良親王の子である陸良親王とは別人としています。これらの書物によれば、興良親王は駿河で生まれ、常陸太守に任じられたとされています。1352年の笛吹峠合戦で敗れた後は、遠江秋葉城を頼ったとされます。その後、今川範国に攻められ、入京後に捕えられ、1377年に病没したと記されています。

これらの俗説は、史実とは異なると考えられています。

参考文献

菅政友 『南山皇胤譜』（『菅政友全集』 国書刊行会、1907年）
安井久善 「宗良親王と興良親王」（『政治経済史学』第298号 日本政治経済史学研究所、1991年）
新井孝重 「興良・常陸親王考」（『獨協経済』第74号 獨協大学経済学部、2001年）
前田徹 「観応の擾乱と赤松則祐」（『兵庫県立歴史博物館紀要 塵界』第23号 兵庫県立歴史博物館、2012年）
新井孝重 『護良親王―武家よりも君の恨めしく渡らせ給ふ』 ミネルヴァ書房、2016年

関連項目

常陸親王：かつて興良親王と同一視されていたが、現在では後醍醐天皇の皇子である満良親王（花園宮）であると考えられています。

もう一度検索