藤原四兄弟

藤原四兄弟と藤原四子政権

奈良時代前期、天平時代の政治舞台で中心的な役割を果たした藤原不比等の四人の息子、藤原四兄弟。彼らは藤原武智麻呂、藤原房前、藤原宇合、藤原麻呂であり、それぞれが藤原氏の有力な支流である南家、北家、式家、京家の祖となりました。武智麻呂、房前、宇合は同母兄弟で、麻呂は異母弟でした。興味深いことに、聖武天皇の母である藤原宮子と聖武天皇の皇后である藤原光明子は、四兄弟の異母姉妹にあたります。

不比等の死後、四兄弟は元正天皇と聖武天皇の治世において、長屋王と激しい権力闘争を繰り広げました。やがて長屋王の変によって長屋王を排除すると、武智麻呂と房前は既に要職に就いていましたが、宇合と麻呂も参議に昇進。朝廷の要職を四兄弟が独占する事態となり、729年から737年までの間、朝廷政治を掌握しました。この時代は「藤原四子政権」と呼ばれています。

藤原四子政権下の政治

藤原四子政権期は、律令制に基づく政治体制の整備と強化が精力的に進められました。財政面では、官稲と民稲を混合した正税制度が確立され、公田地子の京への移転も開始されました。また、治安維持のため、京や畿内には惣管が、平城京以西には鎮撫使（後に節度使）が設置され、地方支配の強化が図られました。外交面では、遣新羅使の派遣や、東北地方への遠征なども行われています。

これらの政策は、律令国家の基盤を強化し、中央集権体制を確立する上で重要な役割を果たしました。しかし、この隆盛は長くは続きませんでした。

疫病と政権の終焉

天平8年（737年）、天然痘の流行（天平の疫病大流行）により、四兄弟は相次いで亡くなりました。この出来事は人々に衝撃を与え、「長屋王の祟り」という噂が広まりました。四兄弟の急死により、藤原四子政権は終焉を迎えます。

四兄弟の子息たちはまだ幼かったため、その後を継ぐものはいませんでした。そこで、光明皇后の異父兄弟であり、臣籍降下していた橘諸兄（葛城王）が右大臣として政権を担うことになります。しかし、740年には宇合の子である藤原広嗣が反乱を起こし（藤原広嗣の乱）、鎮圧されたことで、藤原氏の政治力は一時的に衰退しました。その後、武智麻呂の子である藤原豊成、そして藤原仲麻呂が台頭するまで、藤原氏の大臣不在時代が続きました。

四兄弟の遺産と子孫

藤原四兄弟は、737年の死によって直接的な政治権力は失いましたが、その子孫たちは、それぞれの家系（南家、北家、式家、京家）を形成し、日本の歴史に大きな影響を与え続けました。政治だけでなく、学問や文化面でも活躍し、平安時代以降も藤原氏は日本の歴史において重要な役割を果たしていくことになります。

四兄弟の死は、藤原氏の勢力拡大における転換期となりました。しかし、その功績と子孫たちの活躍は、日本の歴史に不可欠な要素であり続けています。彼らの生涯と業績は、現代においても歴史研究の重要な対象となっています。

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