船山隆

船山 隆（ふなやま たかし）氏は、1941年5月2日に福島県郡山市で生まれ、日本の音楽学、特に現代音楽の研究分野で重要な役割を果たしてきた人物です。批評家としても知られ、東京芸術大学名誉教授の称号を持ち、現在は東京オペラシティ文化財団の評議員も務めています。なお、戸籍上の氏名は「舩山隆」ですが、広く知られる著作活動においては「船山隆」の表記を用いています。

氏の学術的な道のりは、地元の福島県立安積高等学校を卒業後、1960年に東京芸術大学音楽学部楽理科に進学したことから始まりました。同大学院の音楽研究科修士コースを1967年に修了した後、さらに研究を深めるため、1972年から1974年にかけてフランスのパリ第8大学で博士課程に在籍し、海外の研究動向に触れました。帰国後、東京芸術大学で教鞭を執り、1984年には教授に就任。長年にわたり多くの学生を指導し、2009年に定年退官した後、名誉教授としてその功績が称えられています。

船山氏は教育・研究活動と並行して、国内外の音楽祭や文化事業においても中心的な役割を担ってきました。特に、津山国際総合音楽祭では、1987年の第1回で副監督を務めたのを皮切りに、第2回、第3回、第6回、そして第10回では音楽監督として、音楽祭の企画・運営に深く関わりました。また、1998年から2012年まで津山文化振興財団の理事を務め、2002年から2012年までは津山市の音楽顧問として、地域の音楽振興にも寄与しています。他にも、「東西の地平音楽祭」（1983年）、「表現主義音楽再考」（1984年）、「アリオン・レクチャー・コンサート」（1985年～1990年）、長期にわたる「東京の夏音楽祭」（1985年～）、そしてパリ日本文化会館で開催された「武満徹フェスティヴァル」（1997年）など、数多くの重要な音楽祭や企画の構成を手掛けています。文化振興の分野では、京都賞、高松宮世界文化賞、京都音楽賞といった権威ある賞の選考委員も歴任しています。

その幅広い活動と学術的・批評的な功績は高く評価されており、数々の栄誉に輝いています。1986年には芸術選奨文部大臣新人賞とサントリー学芸賞を立て続けに受賞。1988年には、フランス政府より芸術文化勲章シュヴァリエを授与され、国際的な評価も得ています。1991年にはNHK交響楽団による有馬賞を受賞。出身地である福島県からも、2015年に福島県外在住功労者知事表彰を受けています。さらに、音楽監督を務めた第10回津山国際音楽祭が2018年にサントリー地域文化賞を受賞するなど、氏のプロデュース能力も高く評価されています。2020年春には、瑞宝中綬章を受章し、これまでの功労が国家によっても認められました。

船山氏は、サントリー音楽財団（1984年～）、アリオン音楽財団（1985年～）、東京オペラシティ文化財団（1995年～）といった主要な音楽関連財団の評議員を長く務め、日本の音楽界の運営や振興に貢献しています。また、1989年から2002年まで日本フィルハーモニー交響楽団の理事も務めました。私生活では、同じく音楽学者である船山信子氏を妻に持ちます。

氏の主な著作には、現代音楽に関する論考や、特定の作曲家に関する研究書があり、日本の音楽研究における重要な文献となっています。単著、共著、翻訳として以下のものがあります。

単著

『現代音楽 音とポエジー』小沢書店, 1973年
『現代音楽 2 (時のレアリスム)』小沢書店, 1983年
『ストラヴィンスキー 二十世紀音楽の鏡像』音楽之友社, 1985年
『マーラー (カラー版作曲家の生涯)』新潮文庫, 1987年
『武満徹響きの海へ』音楽之友社, 1998年

共著

『渡辺暁雄』(Music gallery wide) 木之下晃写真, 渡辺信子共著 音楽之友社, 1996年

翻訳

ルネ・レイボヴィッツ著『シェーンベルク』 (永遠の音楽家) 白水社, 1970年
ボリス・ド・シュレゼール著『バッハの美学』角倉一朗, 寺田由美子共訳 バッハ叢書 3 白水社, 1977年
ピエール・ブーレーズ著『ブーレーズ音楽論 徒弟の覚書』笠羽映子共訳 晶文社, 1982年
ウラジミール・ジャンケレヴィッチ著『ドビュッシー 生と死の音楽』松橋麻利共訳 青土社, 1987年
* アンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュ著『グスタフ・マーラー 失われた無限を求めて』井上さつき共訳 草思社, 1993年

船山隆氏は、研究者、教育者、批評家、企画者として、日本の音楽、特に現代音楽の理解促進と普及に多大な貢献をしてきた人物です。その活動は学術分野に留まらず、文化事業や地域振興にも及び、その功績は広く認められています。

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