花火 (ストラヴィンスキー)

イーゴリ・ストラヴィンスキーの管弦楽曲「花火」

「花火」（仏: Feu d'artifice）作品4は、20世紀を代表する作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーが初期に手がけた管弦楽曲です。この作品は、スケルツォ形式によるオーケストラのための幻想曲として位置づけられ、演奏時間は約5分と短いながらも、その音楽的魅力は際立っています。

作曲の経緯

ストラヴィンスキー自身の回顧録によると、「花火」は1908年、恩師であるニコライ・リムスキー＝コルサコフの娘ナジェージダと、同門の作曲家マクシミリアン・シテインベルクの結婚を祝して作曲されました。しかし、リムスキー＝コルサコフは同年6月に急逝し、完成した「花火」を聴くことはありませんでした。ストラヴィンスキーは師の死を悼み「葬儀の歌」を作曲しましたが、「花火」はそれ以前にほぼ完成しており、シテインベルク夫妻は7月11日にはその感想を述べています。その後も改訂が続けられ、最終的な完成は1909年の5月から6月頃と考えられています。

初演と評価

「花火」は、1909年にアレクサンドル・ジロティの指揮により「幻想的スケルツォ」とともに初演されたとされています。この初演を聴いたセルゲイ・ディアギレフが、ストラヴィンスキーとの親密な関係を築くきっかけになったと伝えられています。しかし、実際には公開初演は1910年1月9日であり、ストラヴィンスキーがすでに「火の鳥」を作曲中であったことがわかっています。ただし、公開初演以前にも私的な演奏会が数回開催されており、ディアギレフがそのいずれかを聴いた可能性は十分に考えられます。

1917年には、バレエ・リュスによってローマで「花火」が上演されました。この公演では、ストラヴィンスキー自身が指揮を務め、未来派の画家ジャコモ・バッラが舞台装置を担当しました。

音楽的特徴

「花火」は、ストラヴィンスキーの初期作品でありながら、その後の作風に通じる要素も垣間見えます。基本的には調性音楽の枠組みの中にありますが、複調的な響きも散見され、後の作品における複雑な和声やリズムの萌芽を見ることができます。

楽器編成

「花火」の編成は以下の通りです。

ピッコロ
フルート2
オーボエ2（第2奏者はコーラングレ持ち替え）
クラリネット3（第3奏者はバスクラリネット持ち替え）
ファゴット2
ホルン6
トランペット3
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
トライアングル
シンバル
大太鼓
グロッケンシュピール
ハープ2
チェレスタ
* 弦五部（第1ヴァイオリン16、第2ヴァイオリン14、ヴィオラ12、チェロ10、コントラバス8）

この編成からもわかるように、「花火」は比較的大規模なオーケストラのために書かれており、華やかで色彩感豊かな音楽が展開されます。

まとめ

「花火」は、ストラヴィンスキーの初期の作品であり、その後の作曲活動の基盤となる要素が数多く含まれています。短い演奏時間ながらも、その音楽的魅力は色褪せることなく、現在でも多くの人々に愛されています。

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