花笠まつり

花笠まつりとは

花笠まつり（はながさまつり）は、菅（すげ）で編んだ笠に赤い花飾りをつけた花笠を手に持ち、「花笠音頭」に合わせて踊りながら街を練り歩く、日本の伝統的な祭りです。この祭りは、山形県内をはじめとする各地で開催されていますが、中でも山形市で行われる「山形花笠まつり」が最もよく知られています。

花笠音頭と花笠踊り

花笠音頭

花笠まつりで歌われる「花笠音頭」の起源には諸説あります。有力な説としては、大正時代中期に尾花沢で土木作業の際に歌われた土搗唄（どつきうた）がルーツとされています。この土搗唄が昭和初期に民謡化され、「花笠音頭」となりました。また、この歌は「花笠踊り唄」とも呼ばれることがあります。1963年にはパレード用に振り付けが加えられ、蔵王夏祭りで披露されました。

しかし、福岡市博多区で歌われる「博多祝い唄」と歌詞の一部が共通していることから、「博多祝い唄」と同様に、江戸時代の伊勢参りの際に伝わった伊勢の囃子音頭（はやしおんど）が起源である可能性も指摘されています。

踊りについては、菅で編んだ笠に赤い紙の花飾りをつけたものを、景気づけに振ったり回したりしたことが発祥とされています。

花笠踊り

花笠まつりの踊りの振り付けは、山形県内だけでも地域ごとに約10種類存在していました。しかし、山形花笠まつりのために、誰もが手軽に踊れるようにと、振り付けが統一され、「正調花笠踊り～薫風最上川～」が制定されました。これが標準的な振り付けとなり、紅花摘みの作業唄をモチーフにした優雅な踊りであるため、主に女性が踊り手の中心となりました。

1999年には、「正調花笠踊り～蔵王山暁光～」が、新たな標準振り付けとして制定されました。こちらは、豪快な動作を取り入れた振り付けが特徴で、男性の踊り手の増加に貢献しました。一方、「花笠踊り」の発祥の地とされる尾花沢では、笠を豪快に振り回す「笠回し系花笠踊り」が今も行われており、5つの流派が存在します。

花笠踊りが行われる主な祭り

花笠踊りは、以下の祭りの他にも、様々なイベントで踊られています。

正調花笠踊り
8月上旬：山形県上山市「踊る花笠・仮装花笠まつり」（上山温泉）
8月上旬：山形県山形市「山形花笠まつり」（七日町商店街ほか）
8月上旬：山形県天童市「天童夏まつり」（天童温泉）
8月中旬：山形県鶴岡市「庄内花笠祭り」（昭和通り、1997年に終了）
8月下旬：山形県尾花沢市「おばなざわ花笠まつり」（大正小路）
10月上旬：静岡県伊東市「伊東温泉花笠踊り」（伊東駅前通り）
12月中旬：東京都杉並区「杉並花笠祭」（大宮八幡宮）
奉納行事
5月4日・5日：山形県遊佐町「吹浦口ノ宮例大祭」（鳥海山大物忌神社）
9月14日：山形県寒河江市「日和田弥重郎 花笠田植踊」（日和田八幡神社）
その他
7月下旬：山形県尾花沢市「花笠YOSAKOIまつり」（尾花沢市役所そば）

山形花笠まつり

山形市で開催される花笠まつりは、「山形花笠まつり」として知られています。毎年8月5日から7日の3日間開催され、パレードは文翔館正面から七日町商店街にかけての道路で行われます。

この祭りは、もともと山形藩初代藩主の最上義光（もがみよしあき）を祀る義光祭（ぎこうさい）が起源でした。しかし、山形新聞と山形交通（現ヤマコー）の社長であった服部敬雄（はっとりたかお）が、夏期観光の目玉として、県内の伝統的な踊りをアピールすることを提唱し、1963年に「蔵王夏まつり」のイベントの一つとして「花笠音頭パレード」が始まりました。その後、1965年から「山形花笠まつり」として独立し、現在に至ります。

1970年の大阪万博では、日本の祭りのトップとして出演し、その後も、フランスやスペイン、スイスなどの海外のイベントにも招聘されています。

服部氏の影響下にあったマスコミによる大々的な宣伝や、旅行会社によるツアーの企画などによって、花笠まつりは全国的に知名度を上げました。しかし、一方で、山形新聞と山形交通グループが祭りの権利をほぼ独占しているため、観光客が地元商店街にお金を落としにくいという批判もあります。また、祭り期間中には、歌手がゲストとして招かれ、山車に乗ってパレードを行いますが、服部氏が陣取る貴賓席の前で、歌手が山車から降りて服部氏に挨拶をするのが恒例となっていました。

団体によっては、小学生以下の少女が厚化粧をして参加することもあり、「花笠音頭」は大塚文雄（おおつかふみお）が歌唱するバージョンが多く使われています。また、JR山形駅では「花笠音頭」が発車メロディーに採用されています。

開催概要

主催：山形県花笠協議会、山形花笠まつり実行委員会
開催日：毎年8月5日・6日・7日の3日間
会場：山形市街地（十日町・本町・七日町通り～文翔館）

新型コロナウイルスによる影響

2020年には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、史上初めて中止となりました。2021年には規模を縮小し、会場をきらやかスタジアムに変更して2年ぶりに開催されましたが、「ヤッショ、マカショ」の掛け声は禁止され、踊り手はマスクを着用しました。2022年には、踊り手の掛け声や観覧中の飲食、踊り手の水分補給の際の会話が制限されたり、踊り手の人数を1団体あたり100人に制限するなど、感染対策を講じながら、3年ぶりに山形市の中心部で開催されました。2023年には、4年ぶりに通常開催となり、第61回山形花笠まつりが行われました。

なお、中止となった2020年から再開後の2023年まで、中心市街地の活性化と花笠の製作技術の継承を目的に、手作りの花笠で山形市の中心部を飾るプロジェクト「ハナサクヤマガタ」が実施されました。

作品

三波春夫「東京花笠音頭」（1966年）
小林久三『東北四大祭り殺人事件』（1987年）

脚注

（省略）

関連項目

盆踊り
新舞踊
東北六魂祭

外部リンク

山形花笠まつり（公式ウェブサイト）

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