芳ヶ平湿地群

芳ヶ平湿地群の概要

芳ヶ平湿地群（よしがだいらしっちぐん）は、群馬県吾妻郡中之条町と草津町にまたがって位置しており、標高1,000 mから2,000 mの間に広がる面積887 haの湿地群です。この地域は草津白根山の北東側に広がり、2015年5月28日にはラムサール条約に登録された重要な湿地として知られています。また、上信越高原国立公園の特別地域や、志賀高原ユネスコエコパークの緩衝地域に含まれており、国道292号の渋峠からは一望できます。

湿地群の成り立ち

この湿地群は草津白根山の火山活動によって形成され、難透水性の土壌や凹地、クレーターなどが多見られます。具体的には、中間湿原、火口湖、池沼、河川が階段状になって連なっており、代表的な湿原には芳ヶ平湿原、大平湿原、穴地獄が含まれます。特に、芳ヶ平湿原は標高1,832 m、大平湿原は1,600 mに位置し、これらは温帯針葉樹林帯に属する中間湿原の特徴を持っています。

これらの湿原地域では酸性の水質が保たれ、高温の地熱と水温が特徴的で、特殊な植生が形成されています。具体的には、芳ヶ平湿原には池塘とワタスゲ群落、大平湿原にはミズバショウが見られる典型的な湿原景観が展開されます。また、湿原の周辺には抽水植物が生息する天然の池も点在しています。

特異な生態系

穴地獄は草津白根山の噴火により形成されたすり鉢状の地形で、元山川の源流がここに位置します。この場所から湧き出る鉱泉の水温は19.6～29.5℃で、鉄イオンや硫酸イオン、塩化物イオンを多く含んでいるため、pHは2.6〜2.9の非常に強酸性です。この特殊な環境では、好酸性のコケであるチャツボミゴケが豊かに生育しており、ここは日本最大のチャツボミゴケの繁殖地となっています。さらに、2017年には六合チャツボミゴケ公園として国指定の天然記念物に認定されました。

生物相と多様性

芳ヶ平湿地群には、絶滅危惧種を含む442種の植物、20種の動物、62種の野鳥、14種のトンボが確認されており、その生物相は非常に多様です。特に芳ヶ平湿原や大平湿原にはヌマガヤやツルコケモモ、ヤチスゲ、シラビソなど多種類の植物が生息しています。一方で、穴地獄ではチャツボミゴケの密生が見られます。

この湿地群は、高い標高にもかかわらず、火山活動による地熱と高温の伏流水に恵まれているため、日本でのモリアオガエルの最高繁殖地（標高2,150 m）とされています。酸性の水域で天敵となる魚がいないため、モリアオガエルは独特の生態を示し、地上の草むらなどで卵を産む傾向があります。

まとめ

芳ヶ平湿地群はその特異な地形と生態系から、貴重な自然環境として保全されています。訪れることで、自らの目でその美しい景観や多様な生物相を体感できる貴重な機会が広がっています。

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