芳町 (花街)

芳町の歴史



芳町(よしちょう)は、現在の東京都中央区日本橋人形町周辺に位置していた旧町名であり、かつては花街として知られていました。葭町とも表記されます。

江戸時代の遊郭から花街


芳町を含む人形町周辺は、かつて「元吉原」と呼ばれる遊郭が存在し、大変な賑わいを見せていました。しかし、江戸の市街地拡大や1657年の明暦の大火により、遊郭は浅草へと移転(新吉原)することになります。元吉原はその後、私娼窟へと姿を変え、中村座をはじめとする歌舞伎の芝居小屋が立ち並ぶようになりました。それに伴い、陰間茶屋が現れ、若衆と呼ばれる少年たちが客を取るようになり、これが芳町花街の始まりとされています。当時の役者の中には男娼を兼ねる者もいました。

1841年中村座が焼失したことで、芝居小屋は浅草猿若町へと移転。その後、天保の改革によって江戸市中の岡場所(非公認の花街)が取り潰されると、深川から逃れてきた芸妓たちが芳町に移り住み、芸妓花街として発展しました。幕末には24名の芸妓がいたと記録されています。

明治から昭和にかけての隆盛


芳町は、柳橋と霊岸島という二つの花街に挟まれ、一時は勢いが衰えかけていました。しかし、明治初期に隣接する蛎殻町が米穀相場の町として発展すると、芳町も活気を取り戻しました。明治大正昭和にかけて繁栄を極め、日本初の女優となった川上貞奴や、芸妓から歌手に転身した勝太郎など、多くの名妓を輩出しました。

大正時代には、蛎殻町周辺で「白首」と呼ばれる私娼が現れ、風紀を乱すこともありました。昭和初期には、柳橋や霊岸島を凌ぐほどの繁栄を見せ、置屋は240軒、芸妓は700人、待合は140軒近く、料理屋も5、6軒存在し、その多くが蛎殻町界隈に集中していました。

戦後の復興と衰退


第二次世界大戦による営業停止や東京大空襲の被害を乗り越え、芳町の花街1949年に再興を果たしました。当時、芸妓は278名、置屋は177軒、料亭待合は合わせて121軒を数えましたが、高度経済成長期以降は衰退の一途を辿ります。1977年の町名改正により、町名としての芳町は消滅しました。

現在では芸妓料亭も減少し、2010年時点で料亭は『玄冶店 濱田家』一軒のみ、芸妓は16名となっています。それでも、久松をはじめとする少数の芸妓たちが、花街の伝統を守り、後世に伝えようと努めています。


参考文献


浅原須美『東京六花街 芸者さんから教わる和のこころ』ダイヤモンド社、2007年。
上村敏彦『東京 花街・粋な街』街と暮らし社、2008年。


関連項目


吉原[[遊廓]]
歌舞伎
明治

外部リンク


花街の紹介 芳町花柳界 - 東京花柳界情報舎

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