若乃花幹士 (2代)

2代目若乃花 幹士（わかのはな かんじ）

生涯

2代目若乃花 幹士は、1953年4月3日に青森県南津軽郡大鰐町で生まれ、2022年7月16日に69歳で亡くなった元大相撲力士です。本名は下山 勝則（しもやま かつのり）で、現役時代は二子山部屋に所属し、第56代横綱として活躍しました。引退後は年寄・間垣を襲名しました。

若乃花は、大関時代まで「若三杉」の四股名で知られていました。横綱昇進を機に、師匠である初代若乃花の四股名を継承しましたが、一般には「若三杉」として広く認知されています。身長186cm、体重133kgの恵まれた体格を持ち、血液型はA型でした。現役時代の愛称は、本名から「カンボ」と呼ばれていました。

相撲人生

若乃花は、小学校2年生から相撲を始め、大鰐地区の小学生相撲大会で4連覇を達成するなど、幼少の頃から才能を発揮していました。中学2年生の夏休みの作文には「将来は横綱か大関になりたい」と書き、その夢を明確にしていました。

その活躍が、同郷の元横綱・初代若乃花の二子山親方の目に留まり、同じく浪岡町出身の高谷（後の横綱・隆の里）と共に二子山部屋に入門しました。1968年7月場所に初土俵を踏み、「朝ノ花」と名乗っていた幕下時代から、北の湖と並ぶホープとして期待を集めました。

しかし、土俵際で無理に残すことが多かったため、怪我が多く出世がやや遅れました。1973年7月場所には、20歳で新十両に昇進し、2場所で十両を突破、同年11月場所に新入幕を果たしました。1974年11月場所には新小結で11勝4敗という好成績を挙げ、大関候補として注目されるようになりました。幕内昇進後、二子山部屋の座談会では、丼飯を6杯から7杯も食べる健啖家であったことが明かされ、その食欲も力士としての成功を後押ししました。

一時、肝炎を患い伸び悩んだ時期もありましたが、1977年1月場所に関脇で3場所連続11勝4敗の成績を上げ、大関に昇進しました。大関時代は、柔らかい足腰と切れ味鋭い投げ技を武器に、北の湖・輪島全盛期の中で人気を博しました。CMにも多数出演し、応援歌や歌手デビューも果たすなど、その人気は相撲界にとどまりませんでした。


1978年1月場所で13勝を挙げ準優勝、続く3月場所と5月場所では、2場所連続で優勝同点となり、5月場所後に横綱に推薦されました。綱取り直前の3場所通算成績は40勝5敗で、これは大乃国に並ばれるまで最高記録でした。横綱昇進の際には、「精神面での充実」を求められましたが、横綱昇進伝達式では「心技体の充実につとめ、立派な横綱になるよう精進致します」と力強く述べました。横綱土俵入りは、師匠と同じ雲竜型で、師匠の二子山と輪島から指導を受けました。

横綱昇進とともに、師匠の現役名である「若乃花幹士」を襲名しました。若三杉本人は、この改名に驚いたと言われていますが、師匠は部屋創設時から自分の弟子で最初の横綱に自分の名前を継がせると公言していました。

横綱昇進後、若乃花は北の湖とのライバル関係が注目されましたが、優勝回数は4回にとどまり、初代若乃花ほどの活躍はできませんでした。しかし、28場所連続勝ち越しや、23場所連続2桁勝利など、安定した成績を残しました。得意技は、右上手投げと左下手からの捻り技で、懐の深さを生かした奇手も披露しました。一方で、廻しが取れないと力を発揮できない一面もありました。また、勝負にこだわりすぎ、負けた時の悔しさを露わにする一面もありました。また、廻しを固く締める力士としても知られ、1978年5月場所14日目の北の湖戦で肋骨を骨折したというエピソードもあります。

1981年頃から、肝臓病や頸椎捻挫、直腸周囲膿瘍などの病気や怪我で休場が多くなりました。1982年5月場所には12勝3敗と復調したものの、それ以外の場所では2桁勝利がやっとという状態でした。1983年1月場所には進退をかけて出場しましたが、満足な相撲が取れず、29歳9ヶ月の若さで引退を決意しました。

引退後

引退後、若乃花は二子山部屋から分家独立して間垣部屋を創設し、若闘将や若ノ城など、幕内力士を育てました。1998年には日本相撲協会の理事に当選し、地方場所部長を務めました。しかし、2000年代以降は、自身や部屋の弟子に関するトラブルが相次ぎました。

2005年には夫人に先立たれ、2007年には脳出血で倒れ、車椅子生活を余儀なくされました。2008年には弟子の暴行事件や大麻所持事件の責任を取り、理事を辞任しました。2010年には貴乃花の理事選出馬を支持し、二所ノ関一門を破門されました。2013年には間垣部屋を閉じ、伊勢ヶ濱部屋へ移籍しました。2013年12月には、相撲協会を退職しました。

協会退職後は、大阪の高齢者向け住宅で生活し、2022年7月16日に肺がんのため、69歳で亡くなりました。

主な成績

通算成績：656勝323敗85休 勝率.670
幕内成績：512勝234敗70休 勝率.686
横綱成績：260勝86敗65休 勝率.751
大関成績：92勝28敗 勝率.767

幕内最高優勝：4回
三賞：6回
金星：3個

改名歴

下山 勝則（1968年7月場所 - 1971年1月場所）
朝ノ花 勝則（1971年3月場所 - 1972年11月場所）
若三杉 幹士（1973年1月場所 - 1974年5月場所）
若三杉 壽人（1974年7月場所 - 1978年5月場所）
若乃花 幹士（1978年7月場所 - 1983年1月場所）

年寄変遷

若乃花 幹士（1983年1月 - 1983年5月）
間垣 勝晴（1983年5月 - 2013年12月）

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