若江城

若江城：河内国の要衝に築かれた平城の歴史

若江城は、現在の大阪府東大阪市に位置し、かつての河内国若江郡に存在した平城です。15世紀後半には河内守護であった畠山氏が拠点を置き、織田政権時代には大坂本願寺攻めの前線基地として利用されました。この城は、河内国の歴史において重要な役割を果たしました。

地理的特徴

若江は、河内国のほぼ中央に位置し、大和川が二つに分かれる地点にありました。城は、川によって形成された自然堤防の上に築かれ、周囲は低湿地に囲まれていました。この場所は、水上交通の要所であり、大阪から奈良へと続く十三街道と河内を南北に結ぶ河内街道が交差する交通の要衝でした。また、周辺には多くの荘園が集中しており、河内国の中でも特に農業生産力の高い地域でした。若江は古代から政治の中心地であり、若江郡衙や若江寺が置かれていました。

歴史

15世紀後半：畠山氏の拠点

若江城が史料に初めて登場するのは、1460年です。京都を追われた畠山義就がこの城に入城しました。当時、畠山氏では家督争いが起こっており、畠山義就と畠山政長の間で合戦が行われました。義就が敗れると、政長が若江城に入城しました。畠山氏は1382年に河内守護に任じられていましたが、この頃には若江が守護所としての役割を果たしていたことが分かります。

1477年、畠山義就に攻められ若江城は落城し、守護代の遊佐長直は天王寺から船で逃れました。その後、義就は河内に在国しましたが、1479年に誉田屋形を築き、そこを守護所としました。以降、遊佐氏が若江城で活動した記録はなく、小谷利明は若江城がこの頃に廃城になったとしています。

16世紀後半：三好氏、織田氏の拠点

次に若江城が文献に登場するのは、16世紀後半、三好義継の居城としてです。1568年に足利義昭が織田信長と共に上洛すると、三好義継は飯盛山城を与えられました。その後、義継は拠点を若江に移し、1570年には松永久秀が義継のもとへ挨拶に訪れています。1572年には、織田方の軍勢が若江に向かう準備を始めたという記録があり、小谷利明はこの時を義継期の若江城の初出としています。

1573年、足利義昭が槇島城の戦いで信長に敗れると、若江城に移ってきました。その後、義昭は紀伊国由良へと退去しました。同年11月、若江城は信長から派遣された佐久間信盛によって攻められ、義継は自害しました。その後、若江城は若江三人衆に預けられ、彼らは北河内の支配を担い、大坂本願寺攻めに従事しました。若江城は本願寺攻めの拠点として用いられ、1576年には織田信長が若江城に入って本願寺攻めの指揮を執っています。

廃城

1580年に石山合戦が終結すると、若江城は廃城となり、若江三人衆は新たに八尾城を築きました。ルイス・フロイスの書簡によると、1581年の時点ですでに若江に城はなく、町があるだけだったとされています。これらのことから、若江城は1580年から1581年の間に破却されたと推測されています。森田恭二は、1580年12月には若江城の構築物が八尾城に移建されたとして、若江城の破却時期を推定しています。

キリシタンとの関わり

若江三人衆の一人、池田教正はキリシタンでした。1576年、教正は若江に教会を建て、本願寺門徒の改宗が進みました。フロイスの『日本史』によると、教正が建てたのは立派な司祭館付きの教会だったとされています。河内におけるキリシタンの集住地として、岡山、三箇、若江の3か所が挙げられています。若江城の廃城後、若江の教会も姿を消しましたが、現在も若江北町には「クルス」、若江南町には「大臼（デウスを指す）」の字名が残っています。

城の構造と発掘調査

若江城の遺構は地表面には残っていませんが、発掘調査によってその様子が明らかになっています。若江城は若江郡衙や若江寺と共に、若江遺跡に含まれており、1972年から発掘調査が行われています。

15世紀後半の畠山期の遺構としては、溝と井戸のみが発見されています。遺構の少なさから、16世紀後半に城の工事が行われた際に破壊された可能性も考えられます。『長禄記』には、当時の若江城の構造が記されています。

16世紀後半の三好期・織田期の遺構としては、深さ3.5メートル前後、幅15–30メートルの内堀が確認されています。内堀の肩には逆茂木が打たれていました。内堀は湧水層まで掘られていたため常に水を湛えており、廃城後も水路として利用されていたことが判明しています。

内堀に囲まれた主郭は東西約130メートル、南北約130メートルの方形です。主郭内部では石垣や礎石建物、塼列建物が検出されています。塼列建物は土蔵として用いられたとみられ、主郭南の堀に面して建てられていました。主郭南西の内堀では、瓦葺建物を取り壊して廃棄した跡とみられる大量の瓦や壁下地、礎石が見つかっており、主郭南西部に瓦葺の隅櫓があったと推測されます。

若江城周辺では堀の跡が見つかっており、惣構構造だったとも考えられ、その規模は東西560メートル、南北580メートルに及ぶと推定されています。

所在地とアクセス

所在地：大阪府東大阪市若江本町・若江北町・若江南町
アクセス：近鉄奈良線「若江岩田駅」から南に1キロメートル

若江城は、その歴史的背景と地理的特徴から、河内国における重要な拠点であったことが分かります。発掘調査によって徐々に明らかになる城の構造は、当時の建築技術や戦略を垣間見ることができる貴重な情報源となっています。

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