若狭得治

若狭得治：日本の航空史を彩った不屈の経営者

若狭得治（わかさ とくじ）は、1914年11月19日に生まれ、2005年12月27日に没した、日本の運輸官僚であり、傑出した実業家です。彼は、全日本空輸（全日空）の社長、会長、そして名誉会長という要職を歴任し、日本の航空業界に多大な貢献をしました。彼の甥には、歴史研究家として知られる若狭和朋がいます。

若狭得治の足跡

富山県出身の若狭は、砺波中学、旧制富山高校を経て東京帝国大学（現東京大学）に進学しました。1937年9月、東京帝大法学部政治学科在学中に、難関として知られる高等試験行政科に合格。合格者3500人中32番という優秀な成績でした。

終戦までの道のり

官庁訪問の際、内務省に所属していた同郷の片岡清一に相談した若狭は、逓信省への進路を示唆されます。片岡の「内務省は軍人気取り」「逓信省は、海運、電気、郵便などの仕事もやりがいがある」という助言を受け、若狭は逓信省への入省を決意します。1938年に東京帝大法学部政治学科を卒業後、逓信省に入省し、淀橋郵便局に配属されました。

1940年には、国家主導の帝国船舶株式会社の発足に関わります。その後、逓信省外局海務院運行部補佐官、企画院出向、軍需省航空兵器総局補佐官を経て、1945年3月には運輸通信省へ。満州国からの物資輸送ルートを検討します。同年6月、新潟市に設置された運輸省海運総局日本海事務局の輸送課長となり、終戦を迎えます。

運輸官僚としての手腕

1946年8月、戦後復興のための船舶公団設立に尽力し、計画造船を実施。1948年2月には、結核性肋膜炎の療養のため東海海運局伏木支局へ転勤。同年7月より新設された伏木海上保安所長を兼務します。病気療養を経て、1953年10月には大臣官房考査室長として現場復帰を果たし、計画造船制度の運用監査に携わりました。

その後、大臣官房企画課長、神戸海運局長、灯台部長を経て、1959年5月に海運局次長に就任。1961年7月には海運局長に昇進し、海運会社の統合による業界の体質強化を図りました。1965年6月、運輸事務次官となり、国鉄料金の値上げ問題、戦後最大の船員ストの調停、日米航空協定の改定、日ソ航空協定の締結、新東京国際空港（現・成田国際空港）候補地の選定、新東京国際空港公団の設立など、数々の功績を残し、1967年3月14日に退任しました。

全日空中興の祖として

1969年、全日空に顧問として迎えられ、副社長を経て1970年に社長に就任。国際チャーター便の進出、ホテル事業などの多角化を推進し、「全日空中興の祖」と呼ばれました。1976年に会長、1991年に名誉会長、1997年に相談役、1998年から常勤顧問を務めました。

ロッキード事件

全日空社長時代の1976年、ロッキード事件が発覚。外国為替管理法違反、議院証言法違反の罪に問われ、1992年に懲役3年執行猶予5年の刑が確定。しかし、有罪確定後も全日空の役職に留まりました。

その他の活動

1968年4月には港湾近代化促進協議会会長、同年12月には日本海事財団会長、1996年には日本航空協会会長を務めるなど、多岐にわたる分野で活躍しました。

2005年12月、肺炎のため東京都内の病院で逝去。

若狭得治は、激動の時代を生き抜き、日本の海運・航空業界の発展に大きく貢献した人物として、その名が刻まれています。

もう一度検索