苻叡

苻叡（ふ えい）

苻叡（生年不詳 - 384年）は、五胡十六国時代の前秦の皇族であり、第3代君主である苻堅の子として生まれた人物です。彼には、兄として第4代君主となる苻丕、皇太子苻宏、平原公苻暉、広平公苻熙がおり、弟には河間公苻琳、中山公苻詵がいました。

生涯

苻叡は勇敢ではありましたが、粗暴な性格であり、敵を侮る傾向があったと伝えられています。また、配下の兵士に対して粗暴な振る舞いをすることもあったようです。

357年6月、父である苻堅が天王位に即くと、苻叡は鉅鹿公に封じられました。

380年8月には、安東将軍・雍州刺史に任じられ、蒲坂を鎮守することとなり、氐族3千2百戸をその統治下に置かれました。その後、征南将軍に任じられています。

383年5月、東晋の車騎将軍である桓沖が前秦征伐の兵を挙げ、10万の兵を率いて襄陽へ侵攻しました。さらに、前将軍劉波、冠軍将軍桓石虔、振威将軍桓石民らを派遣して沔北の諸城を攻撃しました。6月には、桓沖軍の別動隊が万歳・筑陽を攻撃し、これらを陥落させました。苻叡は苻堅の命により、冠軍将軍慕容垂、左衛将軍毛当と共に歩兵・騎兵併せて5万を率いて襄陽救援に向かいました。苻叡軍が新野へ、慕容垂軍が鄧城まで軍を進めると、桓沖は沔南へ後退しました。7月、苻叡は慕容垂、驍騎将軍石越を前鋒とし、沔水まで進ませました。慕容垂らは夜になると、三軍の兵士全員に十本の炬火を持たせ、樹の枝に括り付けさせました。これにより光が数十里を照らし、これを見た桓沖は上明まで撤退しました。

後に雍州牧に任じられました。

384年3月、前秦の北地長史であった慕容泓が反乱を起こし、華陰において自立を宣言しました。苻叡は都督中外諸軍事・衛大将軍・録尚書事に任じられ、長史竇衝、司馬姚萇を従えて5万の兵を率い、華沢へ進んで慕容泓を討伐しました。4月、前秦軍の襲来を聞いた慕容泓は大いに恐れ、部下を率いて関東へ逃走しました。これを聞いた苻叡はすぐさま追撃して慕容泓を滅ぼそうとしましたが、姚萇はこれを諫めて「鮮卑はみな郷里へ帰る事を望んでおり、故に乱を為したのです。ここは速やかに関中から出るよう命じ、これを遮ろうとしてはなりません。例え鼷鼠であってもその尾を取れば、人に歯向かって噛みつくものです。彼らは自らが困窮していることを知っており、命がけで我らに向かってきましょう。万が一にも利を失えば、悔いても及びませんぞ！軍鼓を鳴らして彼らを従わせるのです。そうすれば、彼らは逃走するだけで我らを顧みる暇などないでしょう」と説きましたが、苻叡は従わずに華沢へ出撃しました。その結果、苻叡は慕容泓に敗れ去り、自身も戦死してしまいました。

姚萇は苻堅からの処罰を恐れて渭北の馬牧場へ逃走すると、天水にいる羌の豪族と共に武装蜂起し、万年秦王を自称して自立してしまいました（後秦の建国）。苻叡の死は、前秦崩壊の一因になったと言えるでしょう。

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